日本のバリアフリーはここが間違っている

【田原】ミライロの事業内容を教えてください。

【垣内】弊社の事業は大きく3つに分かれます。1つは、ハード、環境、施設、設備に対するバリアフリーのご提案です。店舗を新しくつくったり改修するときに、こうすると障害のある方やそのご家族が来店しやすくなりますよ、というご提案をします。

【田原】日本はバリアフリーが進んでないのですか。

【垣内】いや、じつは日本は世界的に見てもっとも進んでいるんです。アメリカでエレベーターがついている駅の割合は約50%ですが、日本はすでに80%を超えています。歩道や車道は舗装されていて、車椅子に乗っていようと杖をついていようと外出できる。小さな島国でありながら、これだけ着実に進めてきた国はありません。ただ、その一方で、エレベーターの設置率が8割に留まっている現状もありまして。

【田原】どういうことですか。

【垣内】そこまでやらなくていいだろうというところにお金をかけすぎて、他の必要なところに行きわたっていないのです。たとえば既存の法律でいうと、客室の総数が50以上の宿泊施設はバリアフリーの客室を1室つくらなくてはいけません。それはいいのですが、企業さんは頑張ってしまって、こんなに広くなくていいよというくらいの大きな部屋を用意して、手すりも全面にはりめぐらせている。利用者からすると、まるで病室みたいで使いたくないんですよね。その結果、稼働率が下がって、事実上、倉庫として使われているという話も聞きます。こうしたお金の使い方は本当にもったいない。

【田原】なるほど。健常者が想像で設計するから、バランスが悪いんだ。

【垣内】そこで私たちがコンサルティングをすることで、環境面を使いやすいものにすると同時に、コスト削減に役立てていただければなと。

ハードではなく、ハートを変える

【田原】2つ目は何ですか。

【垣内】たとえば入り口に階段のある飲食店があったとします。本当はスロープやエレベーターがあったほうがいい。でも店が小さかったり建物が古かったりすると、バリアフリー化がままならないケースもあります。そのようにハードが変えられない場合も、ハート、つまり意識のほうは変えられるはずです。そこでマナー検定などを通して、従業員の方に車椅子に乗っている方や、高齢者の方々への接客方法などをお伝えする教育事業を展開しています。

【田原】事業はもう1つありますね。

【垣内】情報発信のコンサルティングです。すでにバリアフリー化しているのに、それが伝わっていなければ集客に結びつきません。そこでビジネスプランコンテストで提案したように、バリアフリーのマップをつくるなどして情報を発信していく。これが3つ目になります。

【田原】これらの事業を展開するには、まず企業から注文がないといけません。営業は誰がやるんですか。

【垣内】私と一緒に創業した民野(剛郎副社長)の2人で手分けして飛び込み営業です。クライアントはレジャー施設やホテル、結婚式場、飲食店、商業施設と多岐にわたりますが、創業当時はそれらの施設に延べ1000軒、訪問したんじゃないでしょうか。

【田原】みなさん反応はどうでした?

【垣内】すぐに受注にいたるほど簡単ではなかったですが、話を聞いてくれない人はほとんどいなかったです。みなさん、バリアフリーないしは高齢者対応をいつかやらなければいけないと内心では考えていたようで。

【田原】ただ、話は聞いてくれるだけでは仕事にならない。

【垣内】そうですね。なので、1年目は売り上げ120万円しかありませんでした。初仕事は、滋賀県立大学への後者全体を調査する仕事でしたが、今では考えられないくらい金額でした(笑)。それでも発受注でうれしかったのを覚えています。