無制限時間労働 なぜ放置してきたか?

EUと違い、日本における最大の疑問は、なぜ無制限に働かせることを放置してきたのかという点だ。

その原因のひとつは、1947年に労働基準法を制定する際に、長時間残業は時間外割増手当による賃金規制で抑制ができると考えていたからだ。

割増分を払うことを義務づければ経営者は残業させることを躊躇する。その結果、1時間当たり2割5分増しに決まった経緯がある。

だが、割増率を巡ってはアメリカが50%、当時のソ連も50%だったことから世界標準にするべきとの議論もあった。戦後間もない頃であり、50%だと日本の戦後復興が進まないという意見もあり、25%に落ち着いたそうだ。

もうひとつは当時の労働組合の組織率が今と違って高く、労組が安易に36協定で妥協しないだろうと想定していたこともあるだろう。

しかし、そんな思惑は完全に外れた。

結果的に日本では長時間残業が蔓延し、「Karoshi(過労死)」という国際共通語まで生み出す世界に冠たる長時間労働大国になってしまった。今では労基法の時間外労働規制は機能不全に陥っている。

では、今回の新たな上限規制はどういうものになるのだろうか。

現在、厚生労働省の有識者による検討会で審議されているが、与党の自民党も独自の検討を行うことになっている。仮に、上限規制を法律に盛り込むことになれば70年ぶりの法改正になる。

とはいえ、すんなりと運ぶとは思えない。なぜなら、これまでにも政府の審議会でたびたび上限規制が議論されたものの、経済界が規制強化に反対してきた経緯があるからだ。今回も相当抵抗することが予想されるだろう。