昨年1年間を通じ、前代未聞の原油高と価格の乱高下に翻弄された石油業界。混乱のまっただ中、業界最大手の新日石は新日鉱ホールディングスとの経営統合を発表した。一方で、海外市場拡大にも意欲を燃やす。そんな巨大組織の人材づくりとは。

<strong>新日本石油 渡 文明会長</strong>●1936年生まれ。60年、日本石油(現・新日本石油)に入社。新潟製油所を経て、営業畑一筋に歩む。副社長だった99年、三菱石油との企業合併を経験。2000年、社長に就任。05年から現職。03年から08年までは石油連盟会長を、06年からは日本経団連の副会長も務める。
新日本石油 渡 文明会長●1936年生まれ。60年、日本石油(現・新日本石油)に入社。新潟製油所を経て、営業畑一筋に歩む。副社長だった99年、三菱石油との企業合併を経験。2000年、社長に就任。05年から現職。03年から08年までは石油連盟会長を、06年からは日本経団連の副会長も務める。
――昨年からの金融危機と原油価格の乱高下をどう見ていますか。

原油価格のピークは2008年7月の1バレル147ドルでしたが、09年初頭は1バレル40ドルほど。実に3分の1以下です。最近のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物取引は実際の産出量の1000倍、世界総需要の約5倍にも達しています。小さなマーケットに莫大な資金が流れ込んだため、ひとたび何かあると価格が激しく上下する。しかもWTIは世界の原油取引の指標となっているため、翌日には世界に伝播して取引価格に反映されるわけです。まさに世界同時不況と同じ構造です。

――日本も景気後退が深刻化していますが、活路はあるのでしょうか。

打開策として内需主導型経済への転換が盛んに提言されていますが、鍵となる個人消費は将来への不安もあり、弱含みが続いています。したがって、まず国は、個人、とくに高齢者層が資産を安心して消費に回せるよう、税制・社会保障の抜本的な改革像を明示することで、国民の将来不安を払拭していくことが何よりも重要です。しかし、わが国は資材を輸入するために外貨が必要ですから、輸出産業の競争力強化も不可欠です。そのためには諸外国との税制面でのイコールフッティングや、人件費をはじめとする高コスト構造の改善等、国際競争力を高める施策が必要です。