東京・丸の内では、2009年4月に「丸の内パークビル」が竣工予定。同社の主力であるビル事業では丸の内オフィス空室率が約0.78%と堅調を維持しているが、住宅事業ではマンション市況悪化の影響を受け、厳しい状況が続いている。この度、連結子会社であった藤和不動産を完全子会社化、巻き返しを図る。
マンション事業の場合、全体のコストに占める建築費の割合は土地代と半々、もしくはそれより高いのですが、そのコストが昨年は2年前と比べて約30%も値上がりしました。それは価格に転嫁せざるをえず、販売は徐々に低調になっていました。それでも富裕層向けの高額マンションは堅調だったのですが、特に昨年秋のリーマンショック以降、株価の上昇を見込んでローンを組む方や外資系の方などから、住宅のキャンセルが相次ぎました。我々としては予想だにしなかったことが起きたわけです。
実体経済が悪くなってきましたから、オフィスマーケットも悪化し始めています。必ずしも全部が全部、悪いというわけではないのですが、全体的な雰囲気としては、さらに厳しくなっていく可能性があるでしょうね。
――そうした時代に、ビジネスマンはどのような姿勢で臨むべきでしょうか。
いつの時代でも基本はチャレンジ精神でしょう。新しいマーケットを開拓しようと頑張ることで洞察力が備わり、新しい考え方も生まれてくる。そのためには情報が必要です。それも書物で得るだけではなく、実際に自分で見たり、聞いたり、あるいは人と接したりして得る、生きた情報が重要です。私の経験で言えば30代の前半に、群馬県大泉町で分譲住宅を企画したことが原点になっています。最初は東京への通勤者向けを想定したのですが、自分で現地に赴き、調査した結果、これから多くの企業が進出し、企業城下町として発展する可能性が非常に高い場所だと判断しました。そこで、現地における我々のポジションは何なのだろうと考えてみたわけです。
私は企業の担当者や労働組合の方と膝を突き合わせ、ときには酒も酌み交わしたりしながら、情報を集めました。そしてわかったことは、この土地に転勤を希望する理由の一つとして「持ち家が持てる」という方が多く、そうした方は「ここに骨を埋める」覚悟を持っているということでした。一方、既存の建売住宅の多くは、確かに安いけれど、これでみなさんの満足度が満たされるだろうかとの印象でした。そう感じた私は、敷地を従来の物件の二倍以上にし、高級感のある住宅造りをイメージしたのです。
企画の私、それに設計や工事担当、販売担当の、あわせて10人足らずでプロジェクトチームをつくり、ホテルで寝食を共にしながら認識の共有化をはかりました。同時に各企業にも働きかけて社内ローンを有利にしてもらうなど、実際に購入してもらうためのフレームワークもつくりました。高めの価格設定だったのですが、火がついたようにみなさんに買っていただくことができました。先見性を持ってイメージをはっきりさせ、それが本当にチャレンジできるものであるかどうかの裏付けを取る。それを繰り返し、繰り返し、徹底的にやりました。学んでは思い、思っては学ぶという、論語の「学思」の教えを実践したのです。