――100年に一度の激動の時代、そして国際競争力が不可欠なこの状況下で、どういった人材が望まれるのでしょうか。

今、必要なのは「鳥虫魚(ちょうちゅうぎょ)の眼」を持つことです。これはある識者の方が言われた言葉ですが、すなわち全体を俯瞰し状況を把握する「鳥の眼」、地面から現状をつぶさに見る「虫の眼」、流れを読んでそれにのる「魚の眼」を指します。

言い換えれば「現状把握力」「事実の分析力」「戦略的思考力」――これらが企業人にとってますます不可欠なものとなっていくでしょう。ただし、一人一人がこの3つをすべて備えよという意味ではありません。個人はこのうち一つの能力を磨いて伸ばす。そして、リーダーは個々人の能力を適切に組み合わせて、組織が活発に回っていくようチームづくりをする。これが大事だと思います。

あとは粘り強さと誠意。逆境の中で勝ち残るのはいつの時代でも、粘り強く、なすべきことに取り組んでいく人です。そして企業としての誠意、個人としての誠意は何かを自分で考え、行動の中で示していくことでしょうか。

――逆に、能力発揮が難しいのは。

先ほどの答えの裏返しになりますが、諦めが早い人、傲慢で謙虚さが足りない人は伸び悩み、結局能力の発揮はできないでしょうね。世界をマネーゲームに巻き込み、金融バブルを演出した人たちを見れば一目瞭然です。たとえ優れた知識を持っていても、誠意や礼節を欠いた仕事ぶりでは一時的によくてもやがては崩壊し、早晩立場は暗転するでしょう。自由経済を説いたアダム・スミスさえも、「フェアであること」を絶対条件としています。