発電のための燃料となる原油の価格は昨年前半に暴騰。2007年夏の地震以来、柏崎刈羽原発は停止したまま……厳しい状況のなか、昨年6月就任したのが清水正孝社長だ。従来のトップたちの経歴とは異なる異色ぶりが注目を浴びた。

<strong>東京電力 清水正孝社長</strong>●1968年、東京電力入社。資材部長、常務、副社長を経て、2008年6月より社長。「組織が大きくなると、縦割りの弊害が出てくる。その際、組織を横断する『串刺し』の考え方が大事になります。人の交流や組織の運営で『串刺し』を徹底的に行えば、全体最適が生まれるのです」
東京電力 清水正孝社長
1968年、東京電力入社。資材部長、常務、副社長を経て、2008年6月より社長。「組織が大きくなると、縦割りの弊害が出てくる。その際、組織を横断する『串刺し』の考え方が大事になります。人の交流や組織の運営で『串刺し』を徹底的に行えば、全体最適が生まれるのです」
――現在の経済状況をどう見ますか。御社の業績に与える影響は?

電力の需要という窓口から世の中を見てみますと、昨年12月は異常なほどの落ち込みです。産業用大口電力の需要は、日本の全電力会社の合計で対前年比10%以上も減っています。とくに鉄鋼や機械の落ち込みが顕著です。

過去にも減少期は第一次石油危機、第二次石油危機、円高不況、バブル崩壊、金融危機とありましたが、減少から回復まで12~18カ月かかっています。その経験則に当てはめれば、現在の状況は最低1年は続くと思わざるをえません。

しかも、今回の落ち込みは、過去の減少期に比べ異常なほど大幅です。「100年に一度」という表現が、あながち誇張とは言えないほど。当社の業績を左右する最大の要因は電力の需要動向なので、非常に厳しいです。一方、原油価格は昨年秋口から下落に転じましたが、燃料代の上下は、長期的に見れば業績への影響はニュートラルです。タイムラグはあっても電力料金に反映されるからです。

――こういう時期に、経営者やビジネスパーソンにとって大切な心構えや資質は何だとお考えですか?

私は以前から「看脚下」という禅の言葉が好きで、社員にも折に触れ話してきました。暗闇でも足元をしっかり見ろ、ジタバタするな、原点を見失うなというほどの意味です。この言葉を今こそ噛みしめたい。社員たちにも、そうあってほしいと思っています。