――自由化の「前」と「後」とでは、入社する側の意識も変わっていますか?
明らかに違いますね。昔は「東京電力に入りたい」という安定志向が強かったのは否めません。現在は、「東京電力に入って、こういう仕事をしたい」と職種に対する意識が明確です。燃料調達など「商社的に国際舞台で活躍したい」とか「自分の専門の法務の仕事を」など答えが具体的です。昔は「何をやりたいの?」と聞くと、「まあ企画あたりを」などと漠然としていましたからね。
――自由化以降、人材確保で力を入れている分野はありますか?
さまざまな分野において、プロやベテランを通年採用(中途採用)の形でかなりの人数を獲得しています。たとえば、販売分野では現在、IHやヒートポンプなど提案営業を重視していますので、各種業界の営業経験者やゼネコン出身、コンピュータ関係者など幅広い世界から。ダイバーシティ推進室長には外資系化粧品会社からプロを招いたり、PR施設には飲料会社から転職した女性、あるいは料金不払いの世帯に対する債権回収のプロ等々も採用しています。
現業技術の部門でも金属絶縁の分野で学会レベルの人材も多数いれば、土木や建築技術にも女性が進出しています。
――今回の景気悪化による人材像や採用数の変化はありますか?
当社の採用のトレンドを申し上げますと、「失われた10年」と呼ばれた1992~2003年の長期不況期に、最高の人数を採用しています。減らしたのはむしろ回復期に入ってから。
つまり、不況を理由に採用数や人材像は変えてはいません。変化の最大の要因は前述のとおり事業環境の変化、すなわち自由化です。
今回の不況期も、製造業などは採用減の方向なのでしょうが、当社は逆です。今後の事業展開、成長戦略、環境問題対策を考えたとき、人材確保の必要性は高まっています。原子力分野や海外展開(コンサルティング事業や案件投資)などのための要員増が見込まれます。
(小山唯史=構成 的野弘路=撮影)