1908年、東京帝国大学の池田菊苗博士が昆布のうま味をもたらすのがグルタミン酸であることを発見した。二代鈴木三郎助が1年という短期間で事業化し、「味の素」として発売したのが同社の前身である鈴木商店の起源だ。
その創業時の製品名を社名に据えた味の素は、今年で創業100周年を迎えた。
節目を契機に、味の素の知見を世界に知らしめる「味の素ルネッサンス」活動の継続にまい進。単なるうま味の素というだけにとどまらない食生活の向上、加工食品の品質アップ、医療介護現場での貢献などを実現させていく計画だ。
そして新たな成長に向けては、新規分野へ経営資源の重点配分を行い、“時間を買う”M&Aも辞さない構えだという。
同社は次の100年をグループの「第二世紀」と位置づけ、食と健康、いのちのために働く「グローバル健康貢献企業グループ」を旗印に掲げる。さらなるグローバル化を図る味の素を支えてきた、「人材のDNA」とはいったい何か。
構造的に原料高騰は続く
――原料価格の急上昇は食品各社に大きな影響を与えましたが、今後の動きをどう考えていますか。
原料価格の高騰は短期的には落ち着いた感がありますが、今後も中期的に継続していくものと考えています。
農産物の高騰はエタノール問題が引き金でした。その向こうには原油高という問題があり、石油資源がいずれ枯渇する以上、この問題は継続するはずです。
また、発展途上国の生活が豊かになり畜産物の需要が増加する一方、欧米では健康志向の高まりから魚を食べるようになり、水産資源も需要が増えています。
このように考えていくと農産物、畜産物、水産物とすべての食資源において需給の逼迫が続くと考えざるをえません。食資源を原料とする企業は、この認識を前提に事業を展開する必要があります。
つまり、中期的、構造的に続く原料の高騰に対応した新しいコスト構造や価格体系を構築しないと、食資源を確保できなくなる懸念があるのです。