数字ではなく、作物をつくっている

――会社も人も農業への思いがしっかりしていれば、技術は後付けできるのですね。
提供:鈴生

【鈴木】会社がブレるのは、社員が上司や社長にものを言い辛くなったときでしょう。いつでも言葉が一番下から発せられるような会社であるべきだと思っています。目標が必要なのは承知しています。社員がやりたいことの手助けをして、自然に会社が大きくなるといいのですが、いまは「100人の社長をつくりたい」。それぐらいのつもりで人を育てて、最終的に鈴生全体の売上げになればいいと思っています。

――仮に将来300億円、500億円を目指そうと思ったとき、何をすればブレークスルーできて成長するでしょうか。

【鈴木】基本的に一気通貫、種から関わり、野菜を育てて加工して食まで。スーパーなのか、レストランなのかわかりませんが、そこまでの経営をすることです。それをフランチャイズ化したら、たぶん1000億円という夢が浮かんでくる。細かい積み重ねになりますけどね。たとえば「ゼスプリ(ニュージーランドのキウイ企業)」は種から品種を握ってブランドをつくっています。専門のレストランや、あれを外注に出して各スーパーの店舗にゼスプリのブースを持てば、1000億円が見えてくるでしょう。

――成長に向けての具体的な目標値、KPIをどうとらえていますか。

【鈴木】焼津、菊川、磐田に3つの出荷場があります。そこのリーダーには1人当たり生産高を700万円に上げようと言っています。これが唯一の数字です。これを目ざせば面積を広げようが、狭めようが構わない。小さくして反収を上げて700万円でもいい。今年、鈴生は売上7億円を目指すと決めました。それを実現するために、1人当たりの売上げに落としたらそうなりました。現場の積み重ねが実践できる数値まで戻して伝えています。

ただし、そこを優先するとどうもうまくいかないという思いが強くて……。数字は、つくれちゃうんですよ。あくまで数字じゃなく、僕らは作物をつくっている。そのことを心の中にずっと置いています。

(後編に続く)

(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 山岡淳一郎=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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