天災でも野菜を助けられなければ「人災」

――今まで紆余曲折あったと思いますが、ここが鈴生のターニングポイントというのは何でしょうか。危機も含めて……。

【鈴木】3年連続の台風、大雨ですね。災害だったのですが、野菜を助けられなかったら人災だと腹をくくって、畑にポンプ持ち込んでバンバン水を汲み出して、できることはすべてやった。その気持ちを社員全員が持ってくれて、一丸となって乗り越えられました。3年連続の天災にみんなで力を合わせて乗り越えたことが僕の成長につながったかな、と。ターニングポイントを経験して、組織を個人農園から株式会社に変えたんです。

――そのタイミングで株式会社にされたのは、税金の問題とかいろいろ考慮されてですか。

【鈴木】それまで社員を育ててきて、気持ちがひとつになりました。翌年、一緒に苦しいときも乗り越えてきた青年が、独立して新規就農したいと言った。僕が覚えた技術を全部伝えようと思った。彼は、作物を鈴木農園に出したいと言ってくれました。だた、個人農園は生産しかできない。それでもうちに出したいと言うので、作物を買う株式会社を立ち上げたのです。出荷調整が目的でした。

――これから法人化を考えている農家さんには、どんなアドバイスを送りますか。

【鈴木】株式会社の根本に戻ると、その資本を使って商売、生産をするということ。農業ってそうはいかず、自分のお金でスタートして家族が食べられないときは貧しくて、食べられるときは楽しもうみたいな傾向が強い。

だけど株式会社にして企業とお付き合いして資本を、株を集めると設備投資が楽です。機械を購入して生産を始められる。自分のお金でやるのなら、個人でも会社でも一緒ですが、他人の資本を入れる株式会社だったら、今後の新しい形として広がる。農業の身軽さにもつながるし、おもしろいと思っています。

――資本調達についてですが、銀行借り入れとか、ファンドさんからの出資とか、いろいろ方法があるなかで、パートナーさんと一緒に資金面で組むことはいかがでしょうか。

【鈴木】理念の話に戻りますが、資本を出してくれるところが金融機関だろうが、ファンドだろうが、気持ちを共有してほしい。それができないなら、お金を調達しないほうがいい。経営がブレますので。だから、農家が議決権の比率を持てる形での出資が望ましいですね。

――議決権ベースでは過半の51%を生産者側が持ったほうがいいということですか。

【鈴木】それは最低条件です。70%ぐらい持たせてもらえれば、いいのですけどね。従来の25%未満(パートナー側)が本当はよかったんですけど、法改正で49%(パートナー側)、51%(生産法人側)になりましたね。お金は出すけど、口は出さないという企業はそんなにありません。

――議決権へのこだわりは、農業者としての見え方にも関わっているのでは?

【鈴木】企業と提携してやっている以上、その企業名を出してもいいと思います。他の大手さんと組んだとしても「何々ファーム」っていう形で農業者が後ろに隠れるのはアリでしょう。ただ、経営の主体としての農業者は隠れてほしくない。