富士経済の調査によると、植物工場の市場規模は2014年現在55億円だが、20年には約3倍の155億円になる予測だ。
「農業人口の平均年齢は66.5歳。半数近くは70歳以上のため、10年で3分の1ほどに減少する見込みです。それにより定時・定量・低品質・低価格が求められる業務用野菜の調達が難しくなります。そのため、気象環境に左右されずに、高品質な野菜を計画的・安定的に生産できる植物工場への期待が大きくなっています」と植物工場に詳しい千葉大学大学院の丸尾達教授は話す。
植物工場には、太陽光を利用する形式と、1985年頃に日本で開発された人工光型植物工場の2タイプがあるが、ここ数年で急拡大しているのは後者だ。近年、大手電機メーカーから食品会社まで様々な企業の参入が相次いでいるが、過度な急拡大の無理がたたり倒産する企業も出始めている。
それでも、植物工場の拡大は急務だと丸尾教授は話す。「攻めの農業、次世代農業には欠かせない即戦力の技術要素。現状の課題は、専用品種の開発などソフト的な開発や業界全体の標準化が遅れている点。しかし、最重要課題は、人材の不足です」。世界的な課題である農業人口減少への対策は始まったばかりだ。
(大橋昭一=図版作成)