入浴は、重労働で低報酬だから「週1回だけ」
コトがコトですので、改めて支援センターの在宅介護における役割を簡単におさらいしましょう。
家族の誰かが要介護状態になり、相談に行った支援センターでケアマネージャーを決め、判定された要介護度や家族の事情に合わせてケアプランを作成します。そのプランに従って、サービスを提供する事業者を決め、介護が始まるわけです。
ここでポイントとなるのは、利用者は担当するケアマネージャーやサービス事業者を選ぶことはできるのですが、ほとんどの利用者はあまり詳しい情報や知識を持っていないため、話は支援センターが決めた方向で進んでいく、ということです。
支援センターの影響力はそれだけでは終わりません。業者を利用者に仲介する役割を持っているのが、支援センターなのです。サービス事業者には、訪問介護、訪問看護、デイサービス、訪問入浴などそれぞれ専門があり、それらの事業を複数行っている事業者もあります。ケアマネージャーも支援センターを運営する社会福祉法人に所属している人や居宅支援事業所にいる人がいて、これらはすべて民間業者。彼らを仲介するもしないも、支援センターによって決まるといって過言ではないのです。
「介護業界が人手不足なのは確かですが、そのイメージとは異なり、サービス業者は数多くありましてね。他の業種と同様、顧客(利用者)獲得競争をしているんです。ただ、介護業界が他の業種と違うのは、仲介役の地域包括支援センターを運営する社会福祉法人自身も(営利目的の)サービス事業を行っていること。仲介をするという“業者を選べる”立場にあるところがサービス事業をやっているのですから、どうしたって自社のサービスを優先して選ぶことが多くなるわけです」
もちろん、そのサービスの質が良ければ問題はないわけですが、「そうしたケースは少ない」とTさんはいいます。残念な話です。中でも、がっかりしたのは次の話でした。
「例えば、デイサービスでの入浴です。家のお風呂に入るのが困難な方は多く、入浴を楽しみにデイサービスを利用される方も少なくありません。しかし、事業者側からすると入浴は重労働だし事故の危険はあるし、その割に報酬は低いしで、あまりやりたくない、というのが本音です。で、入浴は週1回と決めているところが多いのですが、なかには利用者さんの思いに応えようと、デイサービスに来られた時は毎回入浴できるよう頑張っている事業者さんもある。でも、地域包括支援センターを運営する社会福祉法人が行っているデイサービスの入浴は、週1回が多い。努力しなくても仕事が入るんですから、ラクな方に流れるわけです」