[3] 案件の客観的評価
しかし、営業担当者がいくら努力しても、相手の予算、納期、緊急度、あるいは競合相手からの提案等々、いろいろ要因が介在して案件が座礁する場合がある。突然座礁すると大変だが、座礁する前にいろいろと予兆があるはずだ。それを掴むために、案件の状態を客観データに基づいて評価することが肝心だ。
「交渉相手は誰なのか。担当者なのか、担当部署の責任者なのか」「相手のトップまで、この商談の詳細は通じているのか」「商談は、どこまで進んでいるのか。予算や承認はおりているのか」等々、予兆となりそうな客観データは商談のステップの中から見つけ出すことができる。あらかじめ、案件の状態を病院のカルテのように整理したフォーマットにしておけば、予兆もある程度掴めるだろう。
つまり、その案件について、プロセスをさらに先に進めることができるかどうかを各ステップで判断する。そのために、商談内容をきちんとフォローし、客観データを用いて商談を評価する。「ある条件が満たされたときに初めて、プロセスが一歩進む」というルールが必要だ。
聞いた話だが、IBMの勝率は「2勝1敗3不戦敗」だという。最後まで競争相手と提案合戦をして、勝つのは2回、負けるのは1回。途中で「やめた」といって、途中引き上げが3回というわけだ。同社が常に、「プロセスを先に進めることができるかどうか」を判断していることを窺わせるものである。
[4] 営業サポート
とはいえ、営業担当者の責任ではなく、プロセスの途中で案件進捗が座礁することがある。競合相手から魅力的な提案が出てきたり、相手の緊急度が変化したりする。その種の問題は、営業担当者では解決できない。そのとき、営業マネジャーやトップの判断、あるいは支援が必要になる。そのサポートは迅速に行われる必要があるし、そのためにも営業担当者は商談経緯をきちんとデータに残しておく必要がある。
[5] マネジメント・システム
案件がうまくいかなかったら、どうしてそうなったのかを分析検討し、次につなげる。強い競合相手が出てきて負けたという現象が問題ではなく、そうなった原因を明らかにする。最初のコンサルティングの問題か、商品原価の問題か、必要な商品の品揃えに欠けるところがあったのか、いろいろな問題の可能性が考えられる。
以上の営業プロセス・マネジメントの要諦は図4のように整理できる。
「相手の顔が見える取引」における市場プロセス・マネジメントのさわりを紹介した。最初に紹介した、「柔らかな制御(相手が変わり自分も変わる)」「相手との相互行為の場のマネジメント」「共生的価値の創造」のイメージが掴めただろうか。
顔の見えない相手に対して、どのようなプロセス・マネジメントが可能なのか。それはまた、別の機会に検討しよう。