簡単なことを学ぶ前に難しい勉強をしている

三宅義和・イーオン社長

【三宅】中高6年間の英語がコミュニケーションを目的とした教育ではないからです。だから、小学校の英語学習は音から入る。それはそれでいいのですが、子どもは文字を覚えたいし、読みたいし、書きたいのですよ。そういう欲求を大切にして指導していけばいいと思うのですが。

それなのに、中学校に入って、いきなり、ABCから入って、発音、単語、文法も習うというのでは、最初こそ興味を持っていても、半年ぐらい経つと「英語って難しいなあ」となってしまう。小学校の時期に基本をしっかり作ることは大事です。

【横山】中学校からでも遅くはないと思うんですけど、難しいことを教え過ぎるんじゃないでしょうか。私は外国人と結婚していて、子どもたちはバイリンガルです。英語は家庭で普通に覚えたと思います。中学生の息子に「学校の英語授業ってどう」と聞いてみました。

すると「一番簡単なことを覚える前に、難しいことを無理矢理詰め込もうとするから、やる気がなくなるんだよ」と。それから「だって、普通のことができてないのに、そんな難しい文法だの何だの、そればっかり覚えるように言われたって無理だよ」と話していました。

【三宅】簡単というのは、やさしい単語や例文でしょうかね。

【横山】基本的な単語を3~4つ並べたセンテンスを考えなくても出てくるまで繰り返して身につけさせる。日本語でも、新聞や本を読むには、平仮名や漢字を1字1字読んでいるわけじゃなくて、短い文章として認識していますよね。英語もそれが簡単な文章でできるところまでやっておけば、あとは語彙を増やしていけばいいでしょう。

【三宅】音楽の世界のみならず、スポーツなど、いろいろな分野での日本人の活躍が注目を集めています。テニスの錦織圭選手などは、勝利者インタビューに英語で応じていますよね。素晴らしいと思いながら観ていますが、横山さんは日本人が目指すべき英語はどうあればいいとお考えでしょうか。

【横山】失敗を恐れないということですね。せっかく、中学、高校の6年間で相当な時間を費やして学んできたわけです。1人ひとりの頭の中には、かなりの単語や熟語が詰まっていると思うんですよ。それを「間違っていたら恥ずかしい」という理由で使わないのはもったいなさすぎます。

日本人の母国語は日本語でしょう。それプラスアルファとして国際語としての英語を勉強してきたわけです。だから、外国人にしても日本人に完璧な英語を求めてはいません。むしろ、相手のために英語を勉強してやっているんだという気持ちで、堂々と話せばいい(笑)。でも、日本人は奥ゆかしいので、引っ込み思案になってしまう。

【三宅】いまの話、とても共感できますね。私たちが海外旅行に行けば、その国の言葉を話そうとします。だから、日本にいる外国人なら日本語でしゃべる努力をしてほしいものです。しかし、あまり日本語はできなさそうだからと、私たちが拙い英語で話しかけてあげています。本来なら日本語で会話すべきところを英語でしゃべってあげている。そう思えば、すごく心に余裕が出てきて、落ち着いて話せますよ。

【横山】結局、語学は慣れだと思いますので、使えば使うほど上達します。