英語の授業に子どもは抵抗感がなかった
【三宅義和・イーオン社長】小学校英語ですけれども、2011年に公立の小学校に導入になりました。この年には東日本大震災があり、3月まで私もいろんなメディアから取材を受けました。ところが震災後は小学校英語の報道はほとんどなくなって、どういう反応、どういう状況で小学校英語が入ったのかと、よくわからない状況になりました。
佐藤先生は東京都町田市教育委員会の委託を受けて市内42校にカリキュラム配信をされるなど、小学校現場にも詳しいわけですが、小学校英語導入の際の学校の様子、あるいは先生、生徒たちの反応はどのようなものだったのでしょうか。
【佐藤久美子・玉川大学大学院教授】町田市の委託を受けたのはもうそれより少し前でした。というのは、町田市は09年から英語を必修にしました。それに備えて、07年からの2年間、教育委員会と現場の先生、校長先生方とワーキング・グループを作って、毎月議論を重ねたのです。その時は「英語より国語」っていう意見が、もう全員と言っていいほど多かったですね。
やはり、英語が何か特別なものという感じでしたね。担任の先生は「英語は教えないことを前提に小学校の教諭になったのだから、余計なものは増やさないでくれ」と言われました。そんな先生方を、24回の会議で説得したわけです。「英語って特別じゃないんですよ。コミュニケーション力をつけるっていうことですから、国語との共通点もたくさんあります。そもそも、そうした教育は、小学校の先生が一番お得意なはずです」と、もう一生懸命でした(笑)。
とにかく「英語の発音は心配はいりません。今はCDやDVDなど教材はいっぱいあります。先生が苦労する必要はない。でも子どもたちは英語ができたら嬉しいし、自信にもつながりますよ。だから、やってみましょうよ」と説得しました。そうしたら「じゃ、しょうがない。そのかわり、カリキュラムは全部作ってください。研修もお願いします」ということになり、それ以来、10年間、ずうっと指導案もカリキュラムも作り続け、研修もやっています。
【三宅】でも、その町田市の先生方は幸せですよね。ノウハウがなければ、カリキュラムを作ったりできません。佐藤先生のような専門家から指導を受けられるというのも、非常に有意義なはずです。
【佐藤】お陰さまで「ああ、これは便利でいいな」とだんだん広まってきました。ただ、子どもたちはまったくそんなことはなく、最初から「面白くて、楽しい」って言いました。歌をやっても楽しい、それからなんか絵本を読んでも楽しい、子どもは何をやっても楽しい。だから、子どもと大人はぜんぜん違い、抵抗感はなかったですね。