何が処罰の対象となるのか?

具体的にどういう場合が該当するのかについて、現時点では厚生労働省は示していない。

だが、LGBTが職場でどんな言動に不快を感じ、悩みを抱えているのかという調査もある。一般社団法人社会包摂サポートセンターの「セクシャルマイノリティ専用ライン」(セクマイライン)で電話相談による利用者の仕事に関する悩みを受け付けている(平成26年度報告書)。たとえば以下のような事例が紹介されている。

・職場でカミングアウトしたら、嫌がらせが始まった(同性愛男性)
・職場に女性の格好で出勤したら、「オカマ」などと言われ、個室のトイレに入っているときに水をかけられた(生物学的に男性、性の意識が女性)
・「女性(の体)なのにしぐさや話し方が男性のようで変だ」などと言われ、仕事を辞めた(生物学的に女性、性の意識が男性)
・性別適合手術を受け、女性として現在の職場で働きたいと上司に伝えたところ、「ふざけるな」と言われた(生物学的に男性、性の意識が女性)
・使用者にセクハラされたことで退職した(生物学的に女性、性の意識は男性でも女性でもない)

LGBTの人たちが深刻な悩みを抱えていることがわかる。

これらに加え、同性愛の男性が職場でカミングアウトしたら同僚たちがよそよそしくなったという声もある。

性的少数者の人たちはカミングアウトすることで不利益をこうむることが怖くて言い出せない人も多い。中には、

「職場で同性愛であることを知られるのが恐いため、転職を繰り返してきた」

という切実な声も紹介されている。

じつは紹介した事例や悩みがLGBTに対するセクハラに該当するのか、判然としない。セクハラ指針はあくまでも性的言動による嫌がらせ、つまり“エッチな”言動を対象にしているのであって、LGBTに対する一般的な差別まで禁止しているのではないという意見もある。