医療で命を引き延ばすこと=「幸せ」ではない

●自己治癒力

対症療法はあくまでも症状を抑えるための一時しのぎであって、病気が治っているわけではありません。根本的に病気を治すには、免疫力が上がるよう、考え方や生活習慣、食生活などを見直し、体から変えていく必要があります。

人間の細胞は日々生まれ変わっています、規則正しい生活にシフトをすると、そこから新しい体が生まれます。人生の目的を持って生きることで、細胞活性化が促進され、自己治癒力アップにもつながります。

●往生力

自分の余命はあと1年だと想像してみてください。自分はどんな生き方をしたいか、どんな人生を生きたいか、考えてみるのです。すると、どんな風に死を迎えたいかも想像できると思います。

納得のいく死を迎えるために、元気なうちに何をしておいたらいいかを考え、実践し、後悔のない人生の幕引きに備える。仮に余命が限られてしまっていたとしても、病気とうまく折り合いをつけながら、有意義に楽しく毎日の時間を積み重ねていくことができれば、その人の人生には悔いは残らないことと思います。

これからの医療は、命を引き延ばす方法ばかりが人を幸せにするとは言えなくなっています。一人ひとりが「患者力」をつけて、自分がどうありたいのか、どう生きたいのかを、生き様を示すことで、医療を使っても、医療に依存するのではない、自立した人生を生ききることができるようになるのではないでしょうか。

川嶋朗(かわしま・あきら)
東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門医師。
1957年東京生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。東京女子医科大学大学院、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長をへて現職に。漢方をはじめとするさまざまな代替・伝統医療を取り入れ、西洋医学と統合した医療を手がけている。西洋医学の専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。著書に「人が死ぬときに後悔する34のリスト」(アスコム)「患者力のすすめ」(幻冬舎ルネッサンス)など多数。
(取材・構成=田中響子)
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