今の日本は、医療費が税収に並ぶ勢いです。日本は、国民の自己負担が3割でとどまっており、恵まれた医療を受けられる世界でも有数の国ですが、その恩恵を受けるあまり、私たちは病気を遠ざける努力を怠るっているのかもしれません。今こそ、一人ひとりが患者力を身につけて、医療費の節約を意識しなければならないと、川嶋朗先生は訴えます。

クレジットカードで孫の貯金を使う現在の日本

2014年の国民医療費は約40兆円で、介護費と生活保護費を加えると約52兆円でした。同年の税収は54兆円。医療費が国の予算を圧迫しているのが一目瞭然です。

川嶋朗・東京有明医療大学保険医療学部鍼灸学科教授

現在、医療費は65歳以上が半分以上を使っています。財源は限られているのに、出費がはるかに多い。これは言い方を変えると、祖父母が孫のクレジットカードで孫の貯金を使っているようなものです。

国民皆保険は、健康な人が病気の人を負担するという形で、医療の負担は3割ですんでいますが、これは、健康な人が7割を負担してくれているからです。日本は、国民がこの仕組みに納得して成り立っている、世界でも稀有な国です。海外では、60歳以上は保険適用から外される国もあるくらいですから。

今後、高齢化がさらに加速する日本にとって、国家の医療費の節約は切迫した課題となります。医療費節約を実現するためにも、これからの時代、私たちはもっと体や健康のことを勉強して、医者に頼らない生き方を目指すべきでしょう。

それには一人ひとりが「患者力」を高める必要があります。この「患者力」には、知る力、見抜く力、自己決定力、自己治癒力、往生力が含まれます。患者力を鍛えるこれら5つの力について、説明しましょう。