深夜に機内で立って折鶴するおじさんの謎
ニンニク臭のなか眠ろうとしたのですが、今度はカーテンの奥に立っている人影が見えて、どうも気になってしかたありません。初老の男性が、CAさんが作業するための台の前にたたずんでいて、違和感が。しかも1時間ほど、ずっと立っているのです。幻覚なのか霊なのか……。
CAさんが回ってきたとき、おそるおそる伺いました。
「あそこで立っている男性は何をしているんですか……?」
するとCAさんの口からは予想外の答えが。
「折紙を折っていらっしゃるんです。折紙がご趣味の方のようで……」
えっ、真夜中に折紙? 時速800キロで飛んでいる機上でシートベルトも閉めず、立って折紙をする必要性とは……。おじさん的にエコノミー症候群とかを防止する独自の健康法なのかもしれませんが、意表を突かれました。航空会社にとっては得意客で、趣味の折紙は黙認されているのでしょうか。
折紙おじさんの余韻に浸っていたら、早朝、食事が配られる時間になりました。まだ朝3時半頃でしたが、ななめ後ろの初老男性は「ビールください」とオーダー。えっ? こんな早朝からビール? と驚き、チラっと後ろを見ると、おじさんがグラスを手に、(ビールですが、何か?)というドヤ顔で見てきました。
起きぬけの一杯は、ふだん家庭ではなかなか得られない禁断の味。
そのおじさんはほろ酔い気分で、気に入ったCAさんに、他にはどこの路線に乗っているのか聞いたりしていました。さらに、高度を下げて着陸態勢に入りつつあるのに通路を歩く人とか、棚から何か取り出そうとする人とかいて、最後までやりたい放題のおじさん達。
そして降りる時に見た座席の散らかし具合が半端なかったです。
ビジネスクラスは、仕事に生きてきた男たちが素をさらけ出せる場所。若輩者は立ち入れない、聖域だったと思い知りました。