“賢く”がんばれば勝つことができる

――日本企業でも外国人社員が増えていて、ダイバーシティの問題は取り組むべき経営課題の一つとなっています。

【持田】チームをつくるうえで多様化を認め、バックグラウンドの異なる人を集めないと、長期的に勝ち続ける強さは得られないです。我々も、最近はさまざまな経歴を持った人を採用するように変わってきていますね。一方で、先ほどもお話ししたような準備に対するこだわりなど絶対に譲れない部分は強調して徹底させています。そこが弊社でいう「交渉不可能な枠組み」かもしれません。しかし、うちの社員は時間には割とルーズ。これは厳しく言ってもダメですね……。ギリギリまで準備をやっているから遅くなってしまうのかもしれませんが(笑)。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

【エディー】日本代表はワールドカップで絶対に勝てないだろうと思われていましたが、勝つことができました。自分の強さを理解し、そして、相手方の弱点を攻める方法を知り、そして、失敗を恐れないという気持ちを100%持てば、勝つことができるのです。ただし、ただ一生懸命がんばればいい、というわけではありません。私は「がんばれ」という日本語をあまり使いたくありません。もちろん、一生懸命ハードに取り組まなければなりませんが、賢く、なにより楽しんでやってほしいと考えているからです。どうぞ“賢く”がんばってください。

【持田】ワールドカップでラグビー日本代表に奇跡的勝利をもたらしたエディーさんは日本を離れ、わずか数カ月後にヨーロッパのラグビー強豪六カ国の対抗戦であるシックスネーションズでイングランド代表を13年ぶりの全勝優勝に導いています。結局、大切なのは今です。過去が良かろうが悪かろうが、関係ありません。ここからが勝負です。今というのは絶えず進んでいく。最大限自分のしたいことを今からやるしかない、いつもそう思っています。

持田昌典
ゴールドマン・サックス日本法人社長

1954年、東京都生まれ。77年慶應義塾大大学経済学部に入学。体育会ラグビー部に所属し、3年時には学生日本代表、4年時には副将を務めた。大学卒業後、第一勧業銀行に入行。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールに留学。85年ゴールドマン・サックスへ入社。2001年から日本法人代表に就任。アジア人で唯一の米国本社経営委員会のメンバー。
エディー・ジョーンズ
ラグビーイングランド代表HC

1960年、オーストラリア生まれ。母は日系アメリカ人2世。妻は日本人の日本語教師。シドニー大学では体育学を専攻。1982年シドニー大学を卒業し、高校で体育教師となる。学校長を務めた後、1996年、東海大学ラグビー部のコーチに就任し、指導者としてのキャリアをスタート。2001年オーストラリア代表(ワラビーズ)のHCに就任。03年ワールドカップで準優勝。07年、南アフリカ代表(スプリングボクス)のチームアドバイザーに就任し、07年のワールドカップ優勝に貢献。12年からは日本代表のHCとなり、15年9月ワールドカップでの大躍進に貢献。15年11月からはイングランド代表HCに就任し、今年3月のシックスネーションズではチームを13年ぶりの全勝優勝に導いた。
【関連記事】
エディーヘッドコーチ「試合前、なぜ、五郎丸をあえて叱ったか」
部下を育てない組織はいずれ「泥舟」になる
まとまりのない組織をひとつにするための特効薬
部下を伸ばす質問、潰す質問
「弱点叩き」より「長所強化」のススメ