ラグビーとビジネスの共通点

――2016年1月からエディー・ジョーンズ氏をゴールドマン・サックス日本法人のアドバイザリーボードに迎えられたとのことですが。

【持田昌典氏(以下、持田)】2015年の秋に、アジア地域の幹部が集まる会議で講演をお願いしたことがきっかけです。リーダーシップや人材育成など貴重なお話をいただきました。大変僭越ながら、お考えが私と似ている、と感じたのです。ぜひ社員にも話を聞いてもらいたいと思い、アドバイザリーボードへの就任をお願いしました。

【エディー・ジョーンズ氏(以下、エディー)】分野は違いますが、共通点は多々あります。ゴールドマン・サックスは、競争相手と戦いながらパフォーマンスを上げなければならない会社です。ラグビーも同じ。すべてはどれだけのパフォーマンスを出せるかにかかっています。そして、そのプロセスも同様です。複数の人間が同じ考えのもと行動し、パフォーマンスを上げてもらわなくてはなりません。

――チーム、組織がパフォーマンスを高める、つまり結果を出すために、一番大切なものはなんだと思いますか?

【エディー】なんといっても準備です。私の属しているスポーツの世界では、身体面での準備は不可欠ですが、メンタル面の準備も重要です。勝つためには、まず自分自身をよく知らなければいけないし、相手はどういう存在かも知らなければなりません。また、自分が置かれている環境についてもよく知らなければいけない。これらすべてについて準備を整えるということです。これはビジネスも同じだと思います。

【持田】同感です。やはり準備が一番大切だと思いますね。我々の世界でいうと、例えば財務省が日本郵政グループのIPO(新規公開株)のグローバルコーディネーターを選定する、となれば、プレゼンテーションだけでなく、あらゆる角度から入念な準備をします。我々の準備にかける執念は、すごいものがあると自負しています。

――メンバーに対し、具体的にどのような準備をさせるのですか?

【持田】組織によって目指すところは違いますが、我々の会社でいえば、「勝つことの重要性」をメンバーにいかに浸透させるかにかかっています。といっても、ただ勝てばいいわけではなく、「勝つということは、お客様に貢献してお客様が我々を評価することである」といった目的を明確にし、チームでしっかりと共有することが大切です。

【エディー】持田さんがおっしゃる通りです。チーム、組織を動かし、結果を出すためには、目的が明確であることが大切です。我々はこれからなにをしようとしているのか、どうやってやろうとしているのか、どんな形で勝ちにいこうとしているのかを全員に理解させる。その中で、チームメンバーがそれぞれ、どんな役割を果たすのかを理解させることが非常に重要です。そして、これらを行うのがリーダーの役割なのです。