組織は「枠組み」づくりから始まる

――リーダーシップを発揮する際に、ご自身の個性をどの程度出されますか?

【エディー】チームの監督としてリーダーシップを発揮するうえでは、自分の個性をある程度上から押し付けるという部分も必要です。私は「このチームを絶対に勝つチームにしたい」という気持ちと、「魅力的なラグビーをしてほしい」という気持ちだけは、私の個性として選手たちに押し付けていました。一方で、選手一人ひとりの持つ能力を最大限発揮してもらうために、それぞれの個性を見るマネジメントスキルも必要です。

――組織としての方向性を保ち、メンバーの個性や自主性を発揮させるためにどのようなマネジメントをされていますか。

【エディー】監督としてやらなければならないことは、基本的な「枠組み」を作ることです。選手にはその枠組みの範囲内で、自主的に判断させ行動させています。枠組みを作っておけば、選手同士、何を意図して行動しているのか理解し合うことができるので、方向性がぶれることがありません。ただ、突出した素晴らしい選手には、枠組みを外れたプレーをさせることがあります。ただ、そうした選手は10%以内に抑えないと、みんなが勝手なことをやりだしてしまいますので、注意が必要です。

――枠組みとは具体的にはどんなものでしょうか?

【エディー】どんなプレーをするのか、どんな行動をするのか、についての哲学のようなものです。枠組みの中には、絶対に譲れない交渉不可能なものと、交渉可能なものを設け、交渉可能な枠組みのほうを動かすようにしています。ゴールドマン・サックスもそうした文化が広まっているように感じました。

【持田】そうですね「それはノンネゴシアブルだ」という部分は明確にありますね。そのほうがわかりやすいんです。交渉不可能となったことについては、考える必要がなくなるわけですから。

――例えば、日本代表チームでは、どのようなことが交渉不可能だったのですか。

【エディー】とてもシンプルなルールです。例えば、時間厳守。日本人選手は五分前行動が身についていて、ほぼ時間通りに集まりますが、外国人選手は必ずしもそうではありません。このような交渉不可能な決まりがあることで、チームのまとまりが生まれます。強いチームをつくるときには、こういった一見些細なことと思われるようなことが一番大切なのです。

【持田】そういえば、外国人選手も試合前に国歌を歌っていました。

【エディー】はい。外国人選手にも日本のためにプレーすることに誇りを持ってもらうため、『君が代』のレッスンをしました。また、遠征先のホテルに入るときなどには、日本代表チームのウエアを着ることを義務付けました。日本には制服文化があります。日本のビジネスマンはみなさん同じようなスーツを着ていますよね。どれも小さなことですが、チームの一体感を保つためにはとても大事なことなんです。