戦略進化3:地域連携で街を目的地に

インバウンド戦略に本格的に取り組んでから1年後、中村氏は山梨県の石和温泉組合の幹部から提案を受け、一歩踏み込んだ取り組みに挑戦する。幹部いわく、「訪日の宿泊客は午後7時過ぎには何もすることがなくなる。そこで、旧正月(春節)に、ドンキさんのいさわ店と温泉街を結ぶ夜間シャトルバスを走らせたい」。組合側の熱意に応え、店舗では中華圏の縁起物の水餃子や甘酒を用意し、中国人スタッフも泊まり込みで対応。シャトルバスは大好評を博した。

「当社対関係先という関係ではなく、地域で共生し、共栄していく。これが地域連携の原点になったのです」(中村氏)

11年旧正月のドン・キホーテ全体のインバウンド売上高も飛躍的に伸び、過去最高を記録する。ところが、翌3月11日、東日本大震災発生。震災の影響で、地域の事業者に広告出稿してもらう方式は難しい。

そこで中村氏は行政との連携を模索する。地方が広域で連携する訪日プロモーション事業に国が補助金を出す仕組みを活用したのだ。例えば、店舗のある広島地域の周辺5県をワンセットにした「ようこそ!マップ」を作成。エリア内の好きな街に行ってもらうよう、仕かけたりした。

「広島の店舗の訪日客数は目に見えて増えました。ただ、行政との連携事業は入札制で単年度主義。補助金を得る公共事業方式のプロモーションは持続性を担保できない問題がありました」(中村氏)