ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット……ケタ違いの資産を誇る大富豪たちは慈善活動に熱心だ。税金対策や名誉欲のほかに、彼らが他人のためにお金を使う本当の理由とは。

ブッシュ家からホテルオーナー家系まで

大富豪にとってチャリティとは、財産を守るための大事な手段のひとつであり、寄付金控除を受けることに大きな意味がある。ただし、それだけが彼らのチャリティのすべてではない。たとえば現在30兆円を超える資産を運用するラッセル投資グループの創業者一族、ザック・ラッセル氏。コンサルティング会社を経営する傍ら、ラッセル・ファミリー財団やネクサスなどの慈善団体で中心的役割を果たす27歳であるが、ラッセル氏の慈善活動から見えてくるのは「家族の価値」と西欧の上流社会に根付く「高潔な精神」である。

ザック・ラッセル氏●ラッセル投資グループの創業者一族でラッセル・ファミリー財団の役員。慈善団体「ネクサス」顧問。財団評議会次世代タスクフォースのメンバーとしても活動する。

物心つくころから、家族の慈善活動、地域への奉仕活動、寄付行為を当たり前のものとして見てきたラッセル氏には、利他的な慈善活動がごく自然に人生の一部となっている。

「Money is not everything.(お金がすべてではない)」、そう公言する彼のけれんみない笑顔は、恵まれた環境で育った者だけに与えられる特権ともいえよう。ラッセル氏のように銀のスプーンをくわえて生まれてきた若者が、ネクサスには集結している。ブッシュ家、ケネスコール家、ヒルトンやマリオットなどの著名ホテルグループのオーナー家系など、名だたる家系の子息・息女がメンバーに名を連ねる。そこには「チャリティ」への価値共有のもとに、たがいに身を寄せ合いながら、「家」と「財産」を守る姿が見えてくる。