編集者
石川次郎さん

1941年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、旅行代理店を経て平凡出版(現マガジンハウス)に入社、『平凡パンチ』の編集を担当する。73年に退社し、同時期に退社した木滑良久氏と『POPEYE』の原点となる『Made in U.S.A catalog』を手がける。平凡出版に再入社し、『POPEYE』を創刊。その後、木滑氏とともに『BRUTUS』『Tarzan』『GULLIVER』を創刊。各誌の編集長を務めた。93年に退社し、編集プロダクションji.inc.を設立。『トゥナイト2』(テレビ朝日系)のキャスターほか、TV番組の企画制作も多く手がける。
 

編集者という仕事は、夜の銀座のクラブで作家と打ち合わせというイメージがあるけれど、僕がよく使っていたのは外国人記者クラブのバー。接待や打ち合わせは、ほぼ毎回ここでやっていた。

ここのバー、昔は男性しか入れなくて、しかも会員になる審査がすごく厳しかった。ホステスさんもいないから込み入った話もじっくりできるし、会員同伴じゃないと入れないから、打ち合わせの相手も珍しがって喜んでくれた。それになんといっても高級なクラブよりも全然安いのが魅力だった。

僕は金遣いが荒いように思われていたみたいだけれど、そんなことないです。だいたい、そんなに酒が強いほうじゃないし。醸造酒は飲むと眠くなるので、もっぱら蒸留酒派。あっ、ワインは別だけれどね。

海外での仕事も多かったから、いろいろな街で珍しい物を食べてきたけれど、食べ物に関しては保守的かもしれないな。最後の晩餐には何が食べたいか? う~ん、卵かけご飯かな。

最初に紹介するのは初台にあるフレンチレストラン『アニス』。ここのシェフの清水将さんは、ほんと料理のことしか考えていない、良い意味で料理バカ。いそうでいて、なかなかいないんだよ、こういう料理人。7年くらい『アルページュ』だとかフランスの三ツ星レストランで修業したのだけれど、素材である肉の目利きや捌き方、熟成方法の勉強がしたいと、一流レストランに肉を卸している世界一の精肉店『ユーゴ・デノワイエ』にも入門しているんだ。だからだろうね、肉の料理が非常に美味しい。もちろんジビエも手がけるし、行くたびに違う料理でいつも驚かされる。今日のこのローストした肉は、ロバの肉だってさ。美味しいね。肉とともに野菜も素晴らしくてね。常時、店には100種近くの野菜が用意されているらしい。鮮やかな彩りで美しいだろう? オープンキッチンは客の反応を見て料理したいというシェフのこだわりだろうね。

もう一軒は銀座の『カモメセラー』。ここは友達に紹介してもらったのだけれど、最近一番気に入っている店のひとつ。マスターは銀座の伝説的なオーセンティックバー『モンドバー』に21年いた人だから腕は確か。それに、料理がものすごく充実しているんだ。小腹が空いたときに無性に食べたくなるカツサンド、昭和のナポリタンは絶対おすすめだよ。