そのとき財源はどこから確保すべきか(※2)。 市民サービスとしての保育には、フルタイム共働きの「高所得世帯」への公費補助という側面がある。しかも自治体の多くが国基準の保育料をさらに割り引いて補助率を上げているのが実態だ。サービスを受けられる市民は就労継続と所得を維持できる機会に恵まれるわけだから、受益者に負担を求めるべきだろう。
筆者は、保育料の負担について所得階層に応じた現在の体系を維持しつつ、上限を引き上げる「ワイド化」が望ましいと考える。その場合でも「多子減免」を適用して、第2子半額、第3子無料とすれば、利用者にとっても納得感があるはずだ。
また保育所と幼稚園の「幼保一元化」という問題もある。背景には、認定こども園に一本化できなかったため、それぞれの思惑で整備が進んでいることがある。本来、保育所と幼稚園は連帯できるはずである。受け入れ余地のある幼稚園が長時間の預かり保育を実施したり、将来的な園児減少を見越して0~2歳を受け入れる認定こども園に転換したりする方向に舵を切れば、たとえ保育料が高額になったとしても、それを喜んで負担する世帯があるはずだ。
パートタイム、そして専業主婦(夫)の潜在的な保育需要が段階的に掘り起こされていくので、待機児童解消は当分難しい見込みである。いたずらに政治問題にせず、粛々と保育所を増やす以外にない。
※1:利用調整は非正規雇用や自営業の方々に対して厳しい面もあるが、政治家が口利きしたり、顔なじみになった自治体職員が便宜を図ったりする事態よりも健全である。
※2:保育士の待遇改善にどれくらいの予算が必要になるか議論がある。数千億円から2兆円まで幅があり、数%の改善から潜在保育需要を掘り起こした先まで見通すかで差異がある。