本来、自治体は必要とする住民全員に「認可保育所への預け入れ」を提供する義務がある。しかし都市部の自治体では恒常的に希望が定員を上回っているため、「利用調整」が行われている。

利用調整はくじ引きなどの抽選で決まるわけではない。保護者が保育を必要とする状況に応じて調整が行われる。これは「点数方式」と呼ばれていて、祖父母との同居や保護者の就業状況などで得点が変わる(※1)。 点数の条件は自治体ごとに少しずつ異なるため、結果的に、よく研究して加算を集められた人は「受かる」が、仕組みを知らずに入所申請書を作成した人は「落ちる」ことになる。加算の条件を整えることは、ネットなどで「保活(ほかつ)」と呼ばれている。

たとえばフルタイム共働き世帯でも「落ちる」ことがある。なぜなら同じ条件の共働き世帯でも、第1子が既に認可保育所に在籍している場合の「きょうだい加算」、復職を早めて認可外保育所を利用している「実績加算」などを利用している場合、点数で負けてしまうからだ。

ある自治体の条件では、無職で求職中のシングルマザーであっても、世帯年収1500万円のフルタイム共働き世帯に負け、認可を利用することができない。保活では「高年収は不利」と言われるが、年収は点数が同順位で並んだときに初めて考慮されることが多く、それほど不利にはならない。

なぜこのような不条理が起こるのか。それは保育が、子どもを中心とした福祉の制度から、就労継続支援の市民サービスへと性質を変化させつつあるからだ。

急激に保育所定員が増え続けているにもかかわらず、待機児童問題が一向に解消しないのは、潜在的な保育所需要が大きいからだ。定員が増えれば増えるだけ、入所申請は集まる。認可保育所が市民サービスとして期待されているからである。

待機児童としてカウントされるためには、認可保育所を保留になり、補助金付き保育所にも受け入れてもらえず、育児休業も延長しないことが条件となる。保育所が決まらなかったので育児休業を延長した人、保留になったが自治体が調整した保育所を選ばなかった人は待機児童にはカウントされない。