――最近、理不尽なクレームが多くて、参っているんです。

そういえば僕も昨日、強烈なクレームを受けたばかりですよ。

――えー? 出口さんがですか。

僕の本の広告を出版社が新聞に出したところ、その内容についてクレームがありました。広告の文章で「『てにをは』を正しく書けない人は筋の通った思考ができない」という章のタイトルを読んだおじいさんから、「『てにをは』とは何だ!」とお怒りの電話があったのです。「意味がわからない言葉を、天下の新聞に載せていいのか」というクレームです。

――……その意味がよくわからないのですが。

どんな内容でも、クレームには誠実に対応しなくてはいけません。ただ、どうやって対応すればいいのかわからないものもあります。あなたが受けたクレームもそうだったのかもしれませんね。

――僕は逆ギレしてしまいそうになりましたが。

相手が怒っていたり、感情的になっている場合は、特に冷静に対応することが大事です。こちらも感情的になったら、同じ土俵に上がってしまいますから。そしてクレームの内容や意味がわからない場合、とにかく「聞く」ことが一番です。少なくとも相手が言いたいことはすべて聞く。

――聞いたらどうなったんですか?

よくお聞きすると、「『てにをは』について、辞書を引いたけれど、載ってない。辞書に載っていない言葉を使って、新聞に広告を載せていいと思っているのか」ということだったのです。

僕が、「申し訳ございません。僕の辞書には載っているのですけれど」と申し上げると、沈黙されました。

――……。

そのうち先方が「ところで、これは何が言いたかったのか」とおっしゃるので、「正しい日本語が使えない人はきちんとした思考ができないのではないか、と言いたかったのです」と言ったら、「そういうことが言いたかったのか」と言われて、電話を切られてそれで終わりました。

――僕は出口さんのように冷静に対応できる自信がないのですが。

自分が感情的になってしまいそうになったら「上司に相談してかけ直します」などと言って、一呼吸置くのがいいと思います。その間に、相手の感情も落ち着く可能性があります。

理不尽なクレームはとにかく丁寧に相手の話を聞く。よく聞いたうえで、できないものはできないとハッキリ言う。それでもダメなら上司に相談する。これが基本です。

Answer:相手が話し終えるまでは、冷静に、聞き役に徹してください

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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