顧客、取引先、上司を怒らせてしまった。誰にでも起こる大ピンチ! ミスを帳消しにする謝罪で、以前より良好な人間関係を築ける人もいる。現代人にとって必須のライフスキル、「謝り方」を徹底検証する。

Q.

あなたはある企業でマネジャー職にある。部下の若い社員が取引先に対して失礼な態度を取ったと言ってあなたのところに電話がかかってきた。相手は大声でわめき、一方的にしゃべり続けている。電話口から声も漏れ、周りの目もあるので早く収束させなくてはと焦るが……。
【A】「では、このようにさせていただいてはいかがでしょうか?」とすぐに切り出す
【B】「○○様、もう少し落ち着いてください」となだめる
【C】「そうですね、そうですね」とひたすら相槌を打つ

最初にすべきは「ガス抜き」

怒りのあまり大声で相手をなじったり、感情的になって一方的に怒鳴り続けたりするのが「ヒステリック」タイプである。刑事事件の被害者との示談や悪質なクレーマーへの対応など、ハードな状況における謝罪と交渉を多く経験してきた弁護士の間川清氏は、このタイプには迅速な対応がとくに重要という。

「ヒステリックな人は一人でどんどん感情を高ぶらせてしまう。民事事件でも警察に電話したりすることがあるので、素早く対応する必要があります。ヒステリックなタイプと感じたらとにかく電話で一報を入れ、すぐに会いにいって話を聞くことです」(間川弁護士)

直接対面してからは、相手に共感を示すことが大切である。感情的になっている人に対しては、つい「もう少し落ち着いてください」などと冷静さを求めてしまいそうになるが、かえって逆効果という。

「私が意識しているのは、最初の段階では『ああ、これはとても大変だったのですね。本当に申し訳ございません』と、うろたえるような、相手と同じテンションで謝罪をすることです。『あなたと同じように私も大変な事態が起きたと思っている』ことを示すわけです」(間川弁護士)

一定の共感を示しながら謝罪し、相手の話をしっかり聞いて怒りのガス抜きをして、落ち着いてきたところでお詫びや示談の話に入っていく。間川弁護士が続ける。

「謝罪で一番大切なのはガス抜きだと思います。感情をストレートに出してくるタイプは実は怖くない。言いたいことを言ってもらってガス抜きできれば、相手の心に空間が生まれ、そこに謝罪の言葉が入り込む余地ができるからです。まず心のキャパシティを空けてもらい、それから謝罪の言葉を述べる。これが一連の流れです。一番やってはいけないのは、過失の理由や自分たちの事情を一方的に話すこと。相手がこちらの話を聞くばかりでは、むしろ怒りが大きくなります」(間川弁護士)