企業研修で「gacco」の仕組みを利用する

三宅義和・イーオン社長

【三宅】これからのビジネス展開ですけれども、無料だけでやっていったのでは永続的な展開は難しいのではないでしょうか。収益構造の確立のためにどのようなことをお考えでしょうか。

【伊能】おかげさまで、昨年ぐらいからなんですけれども、企業の研修で「gacco」の仕組みを採用するケースが出始めてきました。例えば、MBAを学べる講座とか、情報セキュリティのコースがあります。それらを、当該企業向けに有料で提供します。さらに、特定のスポンサーがつく講座も多くなってきて、形式としてはオープンとクローズドの両方があります。

例として、総務省統計局が提供した「社会人のためのデータサイエンス入門」がそうです。国がこれから伸びていくためにデータを解析する、分析する能力のある人を、国家レベルで増やしていきたいという政策に沿ったものです。

これらのやり方だと、ユーザーは無料で、行政からお金をいただきますから、ビジネスモデルとしては、BtoCというよりもBtoB、それが学校関連ならBtoS(スクール)になると思っています。

【三宅】これは公教育をも含みますね。

【伊能】当面は、私学から始まるんでしょうが、最終的には21世紀型人材を育成するひとつのやり方になるはずです。こういうオンラインとオフラインをうまく活用した、よく言われる「ブレンディッド・ラーニング」を実践できる仕組みなので、公的な採用も期待しています。

【三宅】これからは官も民も一緒になって、よい教育のために協力していくべき時代になってきています。いま言われた、フェイス・トゥー・フェイスのレッスンとオンラインを組み合わせた「ブレンディッド・ラーニング」が、これからのキーワードのような気がしてなりません。今回、オンラインの「gacco」とオフラインの「イーオン」とが融合をして、日本の英語教育はどのように変わっていくと期待されますか。

【伊能】やっぱり、コミュニケーション能力の醸成でしょう。読み書きだけじゃなくて、会話から何かを生み出せればいい。イーオン様からすると完璧な英語が望ましいと思うんですけれども。

【三宅】いえいえ、そんなことは。

【伊能】受講生には「英語は、下手とか上手いじゃなくて、通じればいいんだよ。発音がいいとか悪いとかではなくて、相手とのコミュニケーションが成立していればOKだよ」という環境をもっと作れたらいいと考えています。テストでも、単語を間違えたら0点ではなくて、通じていればちゃんと点がもらえる。既成概念を壊して、そんな英語学習にしたいです。

【三宅】まったく同感ですね。特に日本人はネイティブのように発音できないから恥ずかしくてしゃべれないという人が非常に多い。ところが、世界中で話されている英語の約70%はノンネイティブ同士の会話です。だから、日本人として分かりやすい英語を堂々と話していくべきでしょう。仮に文法がおかしくても、十分通じる。例えば三人称単数のSを抜かすと学校英語では0点かもしれませんが、実際には十分通じます。

【伊能】本当にそういうものを実現したいですね。