日本の教育を変える「BtoS」ビジネスの可能性

【三宅】現在の「gacco」のユーザー数は何人ですか?

【伊能】現在約19万人を超えました。複数の講座を受講している人もいますから、累計で受講者数が55万人です。とりたててコマーシャルもせずに、口コミだけでここまで来ましたから、そういう意味では上出来かなとは思っています。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】すごい数ですね。それだけの方たちが「MOOC」で学んでいるというのは驚きです。もちろん、講座によって違うのでしょうが、きちんと受講を終える人の割合はどうなっていますか。

【伊能】その点については、修了率という言葉を使っています。当然、各講座によって異なりますが、修了証を発行するところまでいく人は10~20%というところでしょうか。この数字は、アメリカの「MOOC」に比べるとかなり高い。アメリカでは、おおよそ3%~5%と言われています。

【三宅】おそらく、日本人の勤勉さと受講のモチベーションとも関係すると思います。公的資格へのチャレンジにしても、「gacco」には「はじめてのFP FPで学ぶお金の知識」といったカリキュラムもありますが、これを修了しファイナンシャルプランナーを受験するということであれば頑張ると思います。

【伊能】実際、「統計学I:データ分析の基礎」の講座などは、統計検定っていうのが毎年秋にあるので、その前の段階で講座を開講し、テキストは有料で、受験料がちょっと安くなるクーポンをつけたんです。すごく好評で、実際に統計検定もかなりの人数が受けたようです。また、簿記3級は比較的合格しやすいので、受かったら2級は専門学校に通って受験しようというきっかけにもなるようです。

【三宅】まさしく、BtoSのビジネスにつながるわけですよね。そのへんが今後すごく広がっていきそうな気がします。とにかく、入り口の広さというのがすごく魅力だと思います。いきなり通信教育とか通学というと敷居が高いのですが、試しに「gacco」でやってみようというのはキャリアアップの可能性を高めます。その際、ユーザーが利用するデバイスはパソコン、タブレット、スマホ、どれでもOKですね。

【伊能】どれも使われていますけども、どうしても学習ということでパソコンやタブレットが多いようです。ただ、時間帯によってはスマホですね。通勤時間に勉強しようとなるとどうしてもそうなります。あと、面白いのは就寝前です。確かに自分もスマホを枕元に置いています。

もちろん、「gacco」はドコモのユーザーだけに限ったサービスではなく、キャリアフリーです。基本的な考えは、「オープン」です。私はオープンイノベーションというのは本当に重要だなと思っています。なにしろ「MOOC」がそうですから。企業の中で囲い込んで、そこから一切出しませんっていうのでは進化ができない時代になっています。逆にオープンにしていくことによって、マーケットが広くなっていくわけです。

【三宅】さすがにNTTさんのその志はすごい。

【伊能】それはもう当グループのDNAかもしれませんね。よくも悪くも電電公社の歴史があります。つまり、通信インフラは社会の公器だと思って仕事をしているからでしょう。まして「gacco」は教育事業ですから、その役割には、より一層社会性があると認識しています。

【三宅】本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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