商社時代にたたき込まれた英語の重要性

【三宅義和・イーオン社長】今回は一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)常務理事の山下雄士さんをお招きしました。最初に、山下さんご自身の若き日の英語との出会いから語ってもらってもよろしいですか。

山下雄士・一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会常務理事

【山下雄士・IIBC常務理事】英語を始めたのは、中学生の時です。習った先生が今でも印象に残っています。というのも、実践的なスピーキングに力を入れてくれ、とても馴染みやすかったからです。ところが、高校に入ると、英文解釈中心でローマ字読みの英語になってしまいました。音読もローマ字読み。そんな授業なので興味を失ってしまったんですね。

ただ、今にしてよかったと思うのは、大学受験の際に、教科書と参考書だけだと面白くないので、NHKの「ラジオ英会話」を聞いて、自分で声を出すといった訓練をしたことです。ところがまた、大学の4年間は、私にとって空白でした(笑)。1年のときには英語もありましたが、必修なので単位を取ったというだけです。

【三宅】英語が好き、あるいは得意だという人に話を聞くと、若いときにNHKのラジオ講座を聴いていた人はとても多いですね。

【山下】毎日15分間ですけど、生活のリズムに溶け込みやすいということはありました。

【三宅】就職されたのは総合商社の日商岩井(現双日)で、会社ではもう仕事で語学、とりわけ英語は不可欠だったのではないですか。

【山下】英語がここまで必要なのかということを思い知らされました。入社直後の研修期間中もそうでしたが、鉄鉱石を輸入する部門に配属されて、さらにそう感じたわけです。先輩や上司が、オーストラリアであったり、インドであったり、いろんな国と英語でやり取りするわけです。ああ、すばらしい、すごいなと。今にして思えば、結構、ブロークンな人もいましたが。

私はオーストラリアの担当になったんですが、その当時は、鉱山でストライキも頻繁に起きました。そうなると鉄鉱石の積み出しが止まってしまう。そうした情報を整理するために現地新聞の翻訳もさせられました。それを取り引きのある鉄鋼メーカーなどにも配ります。おそらく、英文和訳を、あれほど真剣にやったのは初めてだったと思います。ところが、目一杯直されるわけです。もう、コテンパンなぐらいに(笑)。

【三宅】やっぱり商社マンには、大学入試の勉強とはまた違う厳しさがあるのですね。

【山下】英文を読んで、わかったつもりでも、それを正しい日本語に表現するというのは、結構難しいものだということを、身に染みて感じました。

【三宅】日本人は読んだり、書いたりはできると言われるのですが、そうでなくても、しっかり読むのは非常に難しいし、書くとなると、さらに難しい。山下さんは、そのときに意識して英語力を磨いたと。

【山下】入社して、しばらくは週に2回、会社が英会話コースを用意してくれるわけです。朝8時から10時ごろまでですね。それを1年、2年続けると、あとはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で磨いていくしかありません。