より実践的になるが、難易度は変えていない
【三宅】IIBCが運営してきた「TOEICプログラム」についてお聞きします。今年の5月29日実施の第210回試験から新形式が導入される。10年ぶりの改定ということで、大変、話題になっています。
実は私は、きのうもある受講生と話をしていたのですが、彼が「現在のTOEICテストのスコアは750点ぐらい。どうしても800点にしたいとがんばっていますが、テストが変わるとなると、4月がラストチャンスだ」と言っていました。実際には、どのように変わるのでしょう。一般的には難しくなると受け取られていますが。
【山下】皆さん、そういう印象をお持ちですね。ただ、これは開発という言葉が適切なのかどうかわかりませんが、私どもはアップデートという表現をしています。ただし、これまでの2時間200問。それから10点から990点というスコアは変わりません。というのも、30数年前からやっているテストと、同じ尺度で測れるテストでないといけないわけです。
このことは、テストを開発したアメリカのETS(教育試験サービス)と何度もディスカッションして進めてきました。基本的に難易度は変わっていません。変わるのは、出題形式の一部です。例えば、今までリスニングでは、2人の人が会話していたのが、3人の会話も出題されます。だから、印象としては難易度が上がったと感じられるかもしれません(笑)。
【三宅】それは難しいと思いますよ。2人、それが男性と女性であれば、どちらが話しているかわかりますが、3人目が入ってくると、もう1人は男性あるいは女性ですから、聞き分けにくくなるでしょう。
【山下】また、リーディングセクションにおいても、今まではダブルパッセージと言って、2つの書類、例えば、1つの資料と1つの文章がありましたけれども、今回は3つ、トリプルパッセージという形になります。3つのものを見ないといけない。あるいは中には表やグラフなども入ってきます。それでも、現実のビジネスシーンに即して、より実践的になるということで、難易度は決して変えていません。とはいえ最初は、受験者も面くらうということは想定しています。そこで、新しい形式に馴染んでもらうためにサンプル問題と公式教材を用意しました。
【三宅】ある程度、準備はしたほうがいいけれど、形式が変わるということで、あまり神経質になる必要はないということですかね。
【山下】そう思います。
【三宅】しかし、最近は企業でTOEICテストのスコアが昇進・昇格の条件という現実もあるわけです。私どもイーオンも多くの企業英語研修を担当していますが、受講生の皆様には英語コミュニケーション力をしっかりつけた結果としてスコアも上がると申し上げるのですが、とにかくスコアを上げたいということで小手先のスキルに走る人がなかなか減りません。
【山下】その傾向はありますね。しかし、今度はリスニングにおいても、リーディングにおいても、文章を理解して答えることはもとより、全体の構成あるいは資料も見つつ、そこで述べられている内容を理解して、初めて正解が導けるという問題が盛り込まれています。したがって、テスト用のテクニックや小手先だけでは通じなくなると思います。