御年91 セブン&アイ創業者「一歩踏み込む力」

私の事務所は、東京・千代田区の二番町というところにあります。すぐ近くにはセブン&アイ・ホールディングスの大きな本社ビルがあり、そこには直営のファミリーレストランが併設されています。

私はこれまでにそのファミレスで、セブン&アイの創業者の伊藤雅俊さん(編注:現在は同社の名誉会長。 座右の銘は「常に浮利を追わず」「人間は好みに滅ぶ」)を3度お見かけしたことがあります。伊藤さんはもう90歳を超えておられると思いますが(編注:1924年生まれ)、杖をつきながら一般のお客さまと同じように店にやって来られます。ファミレスでお客さまに交じって食事をすることでその状況をご覧になっているのだと思います。

画像を拡大
Denny's公式サイトより

本社ビルにつながっている直営店ですから、伊藤さんが何か食べたいメニューがあれば、それを秘書に伝えてお店から社内の自室まで持ってこさせることも可能なはずです。何しろ、一代で売上高6兆円を超える日本有数の流通業を築かれた創業経営者なのですから。

しかし、ご自身でお店に行かれるのです。

なぜでしょうか。おそらく定期的な「味」のチェックだけではなく、お店の雰囲気やスタッフのサービスレベル、お客さまの動向などを確認するために、店に足を運ぶのではないでしょうか。やはり、大きな仕事を成し遂げる方は、その「一歩」の踏み込み方が違うのだと私は感じました。

それが、何歳になっても自然にできるのです。90歳を超える名誉会長という地位でありながら、わざわざ行く。前述した「人生の角度を上げる」行為は、例えば、こういうことなのかもしれません。