「はみだし公務員」が楽しい仕事を創造
筆者が入庁後、最初に配属されたのは土木事務所の用地課だった。地権者相手に公共用地確保のため、買収交渉などを行うセクションだ。最初の仕事でスーツ姿で農家に挨拶に行ったら「お前、そがんキレイな格好ばしておいの土地ばちゃんと見てきたとか?」と怒られた。
健康福祉本部医務課に異動して数日後、佐賀広域消防局に出向き、救急医療の現場を直に知るため、「救急車に乗せてほしい」と申し出たときは、「なんば考えとっとね、君は! バカじゃなかね」と怒鳴られた。
そう、本書は筆者の失敗の記録といってもいい。いや、さまざまな経験を積み重ね、その教訓を生かして成功の方策を模索しながら構築していくようすを具体的につづりながら、筆者は佐賀県の救急医療の現場で、救急車にiPadを導入して救急搬送の時間短縮化を推進したり、ドクターヘリの配備などを次々と実現していっている。
公務員の世界では、“希少種”といっていい存在なのかもしれない。だからこそ、自ら「はみだし公務員」と名乗っているのである。しかし、多くの公務員に希望の光を見せるとともに、この書は民間で働くサラリーマンの人たちにとってもうなづきや気づきを与えてくれるだろう。
失敗から学び、目的へのベクトルを繋いでいく。それは公務員でも民間企業でも同じことだからだ。チャレンジなくして、仕事の達成感、面白みは味わえない。仕事とは、そういうものだからだ。
つまりこの本は、いま多くの人たちが「守りの仕事」で自分の仕事の可能性を狭めているなかで、本当に楽しい仕事を自ら創造するためには何が必要なのか、いわば“ポジティブ・シンキングの指南書”だと言えるだろう。