11月19日、フランスワインの新酒・ボジョレーヌーボーが解禁になった。今年は、ブドウ生産地の日照時間が長く、昼夜の気温差も大きい理想的な天候で「50年に1度の出来映え」と伝えられている。この時期のイベントとして定着した感もあるが、日本では不況の影響もあり、全輸入量は昨年比約3割減にとどまったという。
そうしたなか国内のマーケットでは、小売価格が1本580~880円の価格帯の商品、いわゆる低価格ワインが人気だ。もともと300円台のものも販売されていたが、今回の担い手は大手スーパーだ。ワインの“新大陸”と呼ばれるオーストラリアなどから輸入し、国内の大手メーカーの工場で詰めることが多いため、消費者には安心感があるのかもしれない。
2年ほど前のユーロ高でワイン価格は高騰した。このところの低価格設定は、再び需要を喚起するための戦略という見方もある。しかも、そのインパクトを強めるために各社はオリジナルブランドをつくり、シリーズで展開している。ワインは蘊蓄が多く、垣根が高い飲み物だと思われがちだ。が、飲むチャンスが増せば、それを取り払う一因になりうる。
食品卸大手の国分でワインを担当する酒類統括部の堀潤二郎副部長は「おそらく産地の名声もさることながら、美味しさに見合った価格が消費者に支持されていくだろう。ハレの日にはフランスなどの銘醸ワイン。デイリーに嗜むには低価格という傾向が強まるだろう」と説明する。しばらくは、この低価格志向が続きそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)