セックスを拒みたいから「川の字」にする

ところで、リカさんには“狸根入り”のほか、もうひとつ戦略がある。

“川の字”ベッドである。

「子どもの首が座ってからは、夫と私の間に長女を挟み、“川の字”で寝ています。産前に3人で寝られるためにキングサイズのベッドを買い、ずっと『娘がベッドから落ちないように』という建前のもと、2人で娘を挟んで寝ているんです。そうすれば、朝とかに不意打ちに襲われるのを防げますから。でも、娘の寝相が悪く“縦”ではなく“横”で寝てしまったら防壁にならないので、気持ちよく寝ていても“横”から“縦”に戻します。それで起きちゃっても、セックスの妨げに一役買ってくれるなら、意味がある」

取材を進めると、この“川の字”ベッドは、実はセックスを拒みたい女性がよく使う手であることが判明した。キョウコさん(32歳・医療関係者)もそのひとりだ。

「第2子を作るほど経済的な余裕はないということもあるけど、今は、第1子を大事に育てたいという気持ちが強いです。ただ、夫をはっきり拒むと角が立つし、いろいろ厄介ですよね。それで苦肉の策で川の字に。でも川の字の難点は、真ん中の防壁が意外ともろいこと。子供が親より早く起きて遊び始めたら、まだまどろんでいる私に夫の手が伸びる。だから私、朝が苦手だったのに、目が覚めたら誰よりも早くベッドから抜け出すようになりました(笑)」

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一緒に寝なくなるということは、夫婦別室が増える=セックスレスに拍車がかかるということか。

目下、リカさんとキョウコさんが恐れているのは、数年後に子供が川の字から脱出し、自分のベッドで寝たがる“Xデー”。

「その時は、思い切って夫婦別室ですかね」(キョウコさん)

データを見ると、実際、一緒に寝る率は結婚年数が増すほどに減っていく(寝室を別室にする率が上がっていく)。ただ、出産後に別室にせずとも防壁は作れる、というベテランも存在した。

▼子どもの次は、毛布が防壁に

専業主婦のシホさん(40歳)は子供が中学生になり、とうの昔に川の字は卒業せざるを得なくなった。そこで子どもの代わりに生み出したのが、毛布の防壁だ。

「冬が終わり、毛布が要らなくなった時期のことです。毛布をしまう時に『ひょっとして、これは防壁に使えるのでは?』と思いつきました。ちょうど夫が風邪をひいていたので、『風邪がうつりやすい体質だから』と、毛布を縦に折り2人の間に。すると、それが無言の拒否だと受け止められたようで、夫の手が伸びなくなったんです。しめしめ、と、その後も『ごめんね、最近あなた、体臭が……』とかなんとか言って壁を保持しています」