【専務(京セラ)】一連の意識改革を進めていくうえでよかったなと感じたのは、JAL社員は総じて率直ということでした。JALの人は面従腹背という噂でしたが、それは間違い。「はいはい、わかりました」と、なあなあですまさない。中村天風さんのスローガンのポスターを貼るときも、社内報をリニューアルするときも、リーダー勉強会を始めるときも、自分たちの意見はこうだ、だから、できない、できる、と言ってくれました。「倒産したんだから、外部からきた人に盾ついては……」などと遠慮しない。もちろんこちらも遠慮しない。このプロセスによって議論してひとつの意見をまとめあげることができたと思う。意見のぶつかり合いを避けなかったから心が通じ合えたんです。
▼倒産企業から、高収益企業へ。その道のりは、しかし平坦ではなかった。多くの同僚を失うという「痛み」を伴うものだった。無念のうちに会社を去った仲間のため「再上場するぞ」というモチベーションが高まったのだ。
【経理】リストラにより経理部門でも会社を去る人がかなり出ました。再建に必要な多くの人材が流出し、私は愕然としました。けれど、退職を余儀なくされた社員たちは信じられないことに、JAL再建のための最大限のノウハウを残してから去っていったのです。その気持ちに報いたい。そんな思いで私はこの3年間必死に働いてきました。
【総務】それと、社員一丸になれた理由は、やはり稲盛さんの哲学をベースに私たち自身で作り上げたJALフィロソフィの存在が大きかったと思います。
【準備】企業更生計画を作っている最中に、JALフィロソフィの作成や、社員へのフィロソフィ教育を優先する動きに対しては反対意見もありました。でも順番を逆にして、フィロソフィ教育を後回しにしていたら、たぶん今のJALはなかったと思います。