感情に注目する
相手を理解するということは、相手がなぜ反対するのか、つまり彼らに「ノー」と言わせているものは何なのかを理解するということだ。一方的に説得しようとするのではなく、相手の反対を生み出している3つのレベル──それらは互いに絡まり合っている──という観点から反対を捉えることでそれを乗り越えよう。リック・マウラーは、自著『Why Don't You Want What I Want?』でそう主張している。3つのレベルのうちの2つは本質的には感情的なものだ。
マウラーの説明によると、彼がレベル1の反対と呼ぶものは、提出した案の内容に関係がある。メッセージの解釈の仕方において、相手が自分と意見が異なる場合だ。これはたとえば「どうもピンとこないね」といった言葉で表現される。
レベル2とレベル3の反対は感情から生まれるものだ。レベル2の反対は、こちらの案に対して相手が抱く恐怖感に根ざしており、「その案は気に入らない」といった言葉で表現される。例としては、経営側が、大規模な事業再編に伴い、ダウンサイジングの可能性があると発表したときの社員の反応が挙げられる。社員が反対するのは、職を失うかもしれないという恐怖のためだ。
最も乗り越えにくいのはレベル3の反対、つまり、意見そのものに反対しているわけではなく、意見を述べる人間、またはその背後の組織に異議を唱えているというものだ。つまり、相手の本音が「あなたが嫌いだ」という場合である。
これら3つのレベルのうち2つ以上が絡むケースもあるかもしれないが、相手を自分の側に引き寄せるチャンスをわずかでも見出したいと思うなら、焦点をあてるべきはレベル3の感情だ。「レベル3の反対を重要かつ正当なものとして扱わないことが、多くの人が反対を支持に変えられない大きな理由だ」と、マウラーは言う。
相手の話を聞く
相手の視点からものを見て、信頼を勝ち得るためには、相手の言葉にじっくり耳を傾けることが必要だ。そうすることによって初めて、相手がこちらの視点からものを見るようにもっていくことができる。
ウィスコンシン州で活動するコミュニケーションの専門家、リン・グレンシング=ポファールは言う。
「説得力云々の前に、まず相手に信頼してもらえるだけの理由を提供しなくてはいけない。そうすることで初めて相手は自分に好意を持ち、こちらのメッセージを受け取り、それを好きになろうとしてくれる可能性が高まる」