同社が活用する新現役人材は、久留宮氏だけではない。人事制度の再構築をソニーOBが進め、松下電送に長く務めた経理・財務の専門家は月次の試算表作成や決算書の作成指導に携わる。
「新現役の方々の豊富な経験を生かしてもらいたい。大企業で専門性を深めた人材抜きでは、人の育成もうまくいかないと考えています」と、林社長は新現役人材に期待を寄せる。
中小企業で新現役人材が力を発揮するため、双方はどんな点に留意するべきなのだろうか。クオリティ・オブ・ライフでシニア事業を担当する田中裕一氏は、「まず新現役人材には、中小企業の立場で考え、発言することが求められる」と話す。中小企業に比べて大企業は、経営資源に恵まれている場合が多い。「そこに配慮せずに『私のいた会社ではこうだった』と話しても、反発ばかり招くことがあります」(田中氏)。そうした軋轢や誤解を避けるため、コーディネーターの存在が重要になるのだが、やはり本人にも配慮が求められると話す。
一方、中小企業の経営者側も「専門家の意見をちょっと拝聴」といった姿勢ではよくないという。「いつまでにどんな課題を解決してほしいのか、よく話し合って共通の認識をもつことが求められます」(田中氏)。これらは一般的なシニアと企業の関係にも参考になる。
大企業の元経営者が、他企業の顧問や社外取締役に就任する。この道は昔からあるが、対象者は限られる。またシルバー人材センターなどでの労働は広く門戸は開かれているが、それまで培ってきた専門性とはかけ離れた仕事をすることも多い。田中氏は新現役交流会を、「そのどちらとも違う、第3の道だ」と説く。この道が広がっていくことは、これまで眠っていたシニアの力の再発見につながっていくことだろう。