新現役人材を“先生”と呼んで即戦力として歓迎するのは、製薬会社や食品、大学や研究機関などの理科学系研究施設の新設やリフォーム事業で業績を伸ばす、オリエンタル技研工業(本社・東京都千代田区、林進社長)だ。
もともと同社は研究室で使われる理科学機器の製造、販売に携わってきたが、5年ほど前から研究施設全体を設計、新設、リフォームする事業を展開するようになった。現在、年商約60億円、従業員180人の規模に成長し、ここ数年で売り上げを100億円に伸ばす計画を立てている。「その実現には、新現役の方々の力が欠かせません」と林社長は話す。
売り上げ100億円の実現に向け、同社は茨城県つくば市にある研究所設備の組立工場を一新する計画を進めている。新工場は16年秋完成予定で、そこにトヨタ生産方式を導入しようと招いた新現役人材が、トヨタOBの久留宮英信氏(65)だ。
久留宮氏はトヨタの工場で製造課長、製造部長などを歴任し、現場でトヨタ生産方式を実践してきた。14年にいったんトヨタ系企業をリタイア。趣味の油絵を楽しんでいたが、数カ月でそんな生活に飽き足りなくなり、新現役人材に登録したという。
信金の交流会経由で2社に関わった後、15年4月から、クオリティ・オブ・ライフ(東京都千代田区)という企業の紹介でオリエンタル技研工業の顧問になった。名古屋市在住の久留宮氏は月2回、1泊2日の日程で上京している。仲介役となったクオリティ・オブ・ライフは、これまで関東を中心に開催されていた新現役交流会を他地域の信金に拡大する、14年度の中小企業庁事業の実施機関だった企業で、現在も新現役人材のフォロー活動をしている。
久留宮氏は同社の現状を「トヨタ生産方式うんぬんの前に、自分たちのしたいことを実現するため、問題点を洗い出している段階」と説明する。技術、生産管理、製造など5つの部門ごとに、業務改善のテーマ設定やスケジュールづくりを進めており、その進捗管理やアドバイザーを務めている。