国論を二分するテーマは国民に聞く
【塩田】結党の際、党として打ち出したい独自の考え方や路線、姿勢があったのでは。
【松田】私がずっと温めてきたのは「直接、国民に聞こう」という政治です。国論を二分するようなテーマは国民と話し合いながら進めていくという考え方で、政党をつくるならこれをやりたい、とみなさんに説明しました。
直接民主型の政治ですが、何でも国民に丸投げして決めてもらおうということではありません。既成の政党は、党議拘束などで、黙って言うことを聞けと言って、むりやりトップダウンで収めようとする。自民党のように年功序列制度ができ上がっている党ではみんな従いますが、ベンチャー政党にはそういう仕組みや構造がない。でも、みんなで絶対に守らなければならないものがなければ党としてまとまりませんので、直接民主型政治を唱えました。
【塩田】日本は代議制民主主義です。直接民主型をどんな形で取り入れますか。
【松田】もちろん元気会は党としての政策を持っており、結党のときに22の基本政策を発表しています。ですが、重要な政策や法案については、国民に直接、問うてみる。議員はネット番組やパンフレット、ホームページ等で自分の考えを訴えて国民に全部、吟味してもらう。それによって議員間で五分五分のものが六対四や七対三になるかもしれない。われわれはその結果を守って、国会の本会議場でその比率どおりに投票するという仕組みです。
国論を二分するようなテーマについても同じです。私は、みんなの党時代に、この発想に基づいて、原子力発電所の問題で国民投票法案をつくりました。首相公選制も提案しました。自民党が今、ネットで候補者公募を、と言っていますが、その取り組みも以前にみんなの党で実施済みです。ネットで公募し、ネットテレビで面接、街頭演説、討論の風景を全部見てもらって、最後に一般の人たちの投票で公認候補を決めるという仕組みを作り、実行しました。
直接民主主義的な発想へのチャレンジは、みんなの党の時代からずっとやってきました。今までのような国会議員だけの内輪の闘いよりも、外に向けて発信し、みなさんと一緒に考えて決めてもらうほうがよっぽどすっきりしています。
【塩田】直接民主主義的な手法をと思ったのは、何がきっかけだったのですか。
【松田】タリーズコーヒーの経営者だった時代からずっと首相公選制を考えていました。アメリカで大統領選挙の盛り上がりを肌で感じながら育ちましたが、国のトップを国民が決める形を日本でも実現したいと思っていた。そこから発展して、原発を始め、重要なことは国民と一緒に考え、決めたほうがいいのでは、という気持ちが芽生えてきました。
今はインターネットの力もあります。日本のように教育レベルが高い国では「集合知」を活用できるのでは、ということに思い至ったのです。「集合知」という考え方は、実はタリーズ時代から経営者として使ってきました。当時、社長一人の脳味噌なんてたかが知れている、みんなで頭脳を合わせようと訴え、「集合天才」という言葉をつくって社員に説きました。その流れもあって、「集合知」で最後は正しい答えが導き出せるのではと思ったのです。
加えて、リーダーシップだけでなく、フォロワーシップも重要で、首相公選制でトップを決めたら、自分たちで選んだのだから、自分たちで盛り上げ、みんなでその人を守ろうという思いを持つ。それが重要だと思いました。