飛ばしてやろうという欲がミスを呼ぶ

ラウンドしながら、川淵さんに尋ねたことがある。その直前、わたしはショートホールで2度連続、ボールを谷底に落とした。

「原因は何ですか?」

「野地さん、簡単だよ。1オンさせてやろうと力んでいたでしょう。まったくボールを見ていなかった。2度とも、グリーン方向を見ていたからです」

『川淵キャプテンにゴルフを習う』(野地秩嘉著・プレジデント社)

わたしはうなだれて、もう一度、尋ねた。

「何がいけなかったんですか?」

答えはひとこと。

「欲です。すべては欲です。1オンさせてやろう、飛ばしてやろう、バンカーから寄せてやろうという欲がミスを呼ぶ」

ふむ、と少し考えた後、一応、聞いてみた。

「欲をなくすにはどうすればいいんですか?」

川淵さんは笑った。

「ははは、野地さん、欲はなくならないよ。人間から欲をなくすのは無理。だって、神様だって、人間から欲をなくすことはできなかったわけでしょ。欲のない人間はいない。私がいくらアドバイスしても、他人の欲をなくすことはできません。できるはずがない」

なるほど、もっともだなと思いながら、プレーを続けた。結果として、その後もわたしは欲をかいては失敗を繰り返した。