「部長との不定期の評価面談が設定されるのですが、何月何日に面談を実施しますというメールが届くと、誰もが『ああ、ついに俺の番か』と思ったものです。それぐらい社内では退職勧奨が頻繁に行われていました。ただ、その後に日本IBMで実施されたロックアウト解雇(即日解雇)と違い、基本的には『辞めていただけるとうれしい。今、辞めたら退職金をこれだけ上乗せします』と言われます。普通の人はそう言われると辞めていきました」

じつは岡本もそのうちの一人だ。辞めたことに対する忸怩たる思いはあるが、それでも「よくここまで生き延びてきたものだ」という感慨もある。

「月末になると社内の知人から『今月末にレノボを去ることになりました』というメールを受け取ることが増え、1年間に10人くらいはいました。レノボに移籍したとき5つ以上あった開発チームもリーマンショック以降、相当数減らされ、NECとの統合でさらに減り、少なくない社員が去っていきました。それを見ていると自分が辞めることにそれほどのこだわりはありませんでした」

誰しもリストラの対象にされたくないものだ。だが、退職勧奨は避けられない運命かもしれないと言う。

「たとえば同じ仕事をしている人が2人いた場合は、成績の悪い人が狙われますが、そうでない場合は代替可能かどうかで判断されます。その人が辞めると回らなくなる仕事であれば狙われませんが、そういう人は少ない。多くの部署では3人で2つの仕事をしているか、2人で1つの仕事をしていますから、それを1人でやらせて残りを減らしていきます。さらに部署を統合することでもう一段減らそうとしますし、よほどの能力がないと生き残れないと思います」