普通に考えたら玩具屋にはつくれない

06年4月からメンバーに加わった高橋裕基は、社員が共有する3つの価値観「バンダイバリュー」を持ち出し、バンダイではそれが普通のことだと話す。その1つが、「チャレンジャー魂『まず、やってみよう!』」だ。「普通に考えたら、玩具屋にケータイはつくれない」ことはわかっていたが、「なんだか簡単にできそう」と早々にウィルコムとパートナーシップを結んだ。ウィルコムを選んだのも、膨大なマーケットリサーチや綿密な分析に基づいたものではない。「まず、やってみよう!」で始まったものだった。

<strong>「分析している時間があったら動こう、といつも言っています」</strong><br>
ガールズトイ事業部の高橋(右)と次長職の飛田(左)。部下・上司というより、仲の良い同僚という雰囲気。

「分析している時間があったら動こう、といつも言っています」 ガールズトイ事業部の高橋(右)と次長職の飛田(左)。部下・上司というより、仲の良い同僚という雰囲気。

そもそも、バンダイには「やってはいけない」ことが何もない。自社での新商品開発でも、他社とのパートナーシップが必要な場合でも、その判断基準は「お客さん(多くは子供)がそれを面白いと思ってくれるか」である。

「よく言うんですが、バンダイには『散らかし屋』と『片付け屋』がいます。比率だと、6対4か7対3くらい。でも、声が大きいから実際には『散らかし屋』はもっと多いように感じます」(高橋)

テレビCMや雑誌で他社の商品を見ていても、「こうしたほうが絶対面白いのに」とつい考えてしまうという高橋は、散らかし屋代表と言っていいだろう。彼に限らず、会議中も「これ、思いついたんだけど……」という発言が飛び出し、横道にそれてしまうことが多いという。

キャリア、電機メーカー、バンダイという3社での共同開発ではなく、自社で参入すると決めた理由もここにある。「散らかし屋」が中心となって膨らんでいった構想をそのまま形にしたかったのだ。

「一般的に端末開発は、メーカーからの提案ではなくキャリア主導で行われるようです。まして(ケータイでは)素人のバンダイに、大手キャリアが自由にやらせてくれるはずもない――。そういう思いもありました」(飛田)