エキナカクリニック医療崩壊の一因として「コンビニ受診」が取り沙汰されている。風邪などの軽症にもかかわらず、深夜にコンビニ感覚で救急病院を訪れる患者が増えているという。当直医の多くは前日昼間からの連続勤務だ。軽症患者のために仮眠時間を削られると体がもたない。一方で多忙な勤め人は男女を問わず、日中に受診する余裕はない。その結果、症状が悪化して――。

立川駅構内のナビタスクリニック立川の待合室。広々としたつくりで、エキナカとは思えない。

立川駅構内のナビタスクリニック立川の待合室。広々としたつくりで、エキナカとは思えない。

この悪循環に一石を投じる診療所が2008年6月、JR立川駅構内に開業した。ナビタスクリニックの久住英二院長は「コンビニ受診は大歓迎。そのために開業したんですから」という。

同院は立川駅から徒歩0分。日本初の「エキナカクリニック」だ。平日は午前10時から午後9時まで、土曜も午後5時まで診療を受け付けている。内科と小児科は常勤医師がおり、曜日によっては皮膚科や女性内科などの受診も可能。患者の87%は「学校・会社帰り」の来院だという。

「患者の40%以上は午後5時以降に来院し、最も込みあうのは6時台。逆に8時を過ぎると空いてくる。診療時間を深夜に延ばさずとも、ニーズには十分応えられます。コンビニ受診を減らす一助になれば」(久住院長)

経営は順調だ。1日当たりの患者数は約130人。開業半年では異例という。

「夜間診療は高いコストに見合った保険点数がつかず、インセンティブがなかった。だが立地とやり方次第で採算は取れる。うちが成功すれば『やりたい』という人も出てくる。文句をいうだけでなく、医療者の側からも医療を変えていく必要があります」

(板橋雄一=撮影)