「ポスト京都議定書」(以下、ポスト京都)の熾烈な交渉が本格化してきた。1997年に議決された京都議定書の目標達成期限は2012年。次期のポスト京都は、来年末に開かれる国連気候変動枠組条約の第15回締約国会議(COP15)で合意予定だが、そのたたき台が、今月12日まで開催されるCOP14で議論されている。
ポスト京都が前回と違う点は2つある。1つは米国が復帰する点だ。京都議定書から離脱していた米国だが、環境対策に積極的な民主党・オバマ政権の樹立を機に方針を変更すると見られる。EUと日本中心であった同会議のパワーバランスは変化するだろう。
もう1つは先進国だけではなく新興国にも一定の責任を求めることだ。中国やインドなど温室効果ガスの大量排出国の参加は不可欠であるものの、経済発展への影響を懸念する新興国側の数値規制への反発は激しい。
さらにもう1つの火種がある。削減の基準年を巡り、90年代を基準にすべきと主張するEUと、最新年を含む複数基準年を主張する日本との対立だ。EUには東欧などエネルギー効率改善の余地がある地域がまだ残っているが、日本が90年代の水準に戻すのは至難の業であり、基準年次第で一気に苦境に立たされることになる。
一方、昨今の不安定な経済事情も影を落とす。このままだと「環境にカネをつぎ込んでいる場合ではない」と方針を変更する国も出てきかねない。「ポスト京都」とは、「環境」の名を冠された、複雑な外交問題なのである。