クックパッドの近年の成長を後押しした環境要因に、キャリア決済の広がりがある。キャリア決済とは、携帯電話料金とまとめて各種のネット・サービスの支払いができる仕組みで、支払時にクレジットカード番号を入力する必要がない。クックパッドでは、08年末から09年初めにかけて携帯キャリア3社のキャリア決済が利用できるようになり、有料会員申し込みの障壁が低下した。
10年代に入るとスマートフォンの普及が進む。クックパッドとスマホは相性がよい(表3参照)。スマホは、フィーチャーフォンよりも画面が大きく、しかもタッチパネル方式なのでスクロールも容易である。PCと比べても使用場所の制約が大きく低下する。移動中の電車や買い物中のスーパーなど、外出先での利用が一段と容易になる。キッチンからの写真を添えたレシピの投稿もスマホだと手間が少ない。クックパッドはこれを見逃さず、スマホへのすばやい対応を図った。
環境面の追い風という意味では、同じ時期に共働き世帯の比率が高まっていったことも見逃せない。いわゆるサラリーマン世帯についていうと、06年頃までは専業主婦世帯の1.1倍程度だった共働き世帯は、14年には1.5倍へと拡大していく(内閣府『男女共同参画白書 平成27年版』)。家庭の主婦が、新聞の折り込みチラシやお昼のワイドショーを見ながら献立を考え、スーパーや商店街を回るという慣れ親しんだ購買光景は、過去のものとなりつつある。この変化が、場所を選ばない献立選びの価値をさらに高める。
しかしクックパッドは、これらの環境変化のおかげで、何もせずに成功をおさめたわけではない。環境変化の追い風が吹き出す以前に、2つの重要な改革を行っている。
第1の改革は、有料会員事業の導入である。現在の有料会員事業がスタートしたのは、04年になってから。それまでは、クックパッドでも事業収入の主軸は広告だった(表4参照)。