近所のスーパーの「特売情報」を配信するサービス

膨大なレシピの蓄積があるからクックパッドには魅力があり、魅力があるからクックパッドにはレシピが集まる。クックパッドは、この循環する関係を支える機能を拡充していくことで、関係を深めるとともに複線化し、太く大きな流れを導いている(図1参照)。

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図1 心理的インセンティブを生む「循環」

クックパッドは13年2月に、この流れをさらに広げる新たな試みを開始した。「特売情報サービス」である。これは、クックパッドの利用者が自宅周辺のスーパーなどを登録しておくと、店舗の特価品やおすすめの旬の商品の情報が配信されるというサービスである。

配信される商品の情報は、レシピと自動的に連動する。例えば牡蠣の特売情報であれば、オイル漬けやグラタンなどの関連レシピがその横に表示される。逆にレシピを検索すれば、その料理に使う素材に関連した特売情報が表示される。

このサービスは、個々の店の売り場からクックパッドの利用者に向けて、その日の入荷情報をタイムリーに発信していくことを可能にする。クックパッドでは、忙しい店舗スタッフが、PCではなく使い慣れたスマホから、簡単な操作で発信できるインターフェイスを採用している。先述したように折り込みチラシの効果が弱まる中で、新たな個店回帰型の情報発信手段として、このサービスの利用が広がりはじめている。

クックパッドは市場環境の変化の中で、自らを位置づけるエコシステムと、その強化にいかに寄与するかを見いだし、その拡充を促してきた。その取り組みの多くは、市場環境の変化に先立ち、その予測もままならぬ時点ですでに動きだしているのだ。人事を尽くして“追い風”を待つ。ただし人事を尽くさなければ、追い風を捉えることはかなわない。

(大橋昭一=図版作成)
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