海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。

顧客本位に立ち返り、ニーズ発掘

中小企業向け商品に強い大同生命と、家庭向け商品を得意とする太陽生命など3社を傘下に置くT&DHD。11年前の発足以来、何でも揃える“総合デパート型”ではなく、それぞれの強みを追求する“ブティック型”経営で存在感を示してきた。ヨットが趣味の喜田哲弘社長に、今後の舵取りを聞いた。

――仕事で大事にしていることは?

【喜田】独善的にならず、外の目を意識すること。いまIRで海外投資家に説明に回っているが、外側から話を聞かせていただくことが我々にとって大切な視点の一つになっている。

T&Dホールディングス社長 喜田哲弘氏

多様な視点の必要性は、昔から意識してきた。24歳のとき、約40社から人を集めたファイナンス会社に出向した。私のようにとにかく元気が取り柄の生保マンもいれば、冷静に数字を見る銀行の方もいた。同じ仕事でも、さまざまなアプローチがあることがわかり非常に勉強になった。そのころから自分の常識だけでものを見ないことを心がけてきた。

――印象に残っている仕事は。

【喜田】大同生命と太陽生命の業務提携だ。当時、私は大同生命で人事部長だった。業務提携についてはまったく知らされておらず、テレビのニュースを見た実家の父親から最初に連絡をもらい、驚いた記憶がある。私は提携協議のフロントに立ってまとめあげるよう指示された。苦労したのは、株式会社化の手続きだ。持ち株会社をつくるには、まず相互会社である両社を株式会社にする必要がある。いまでこそ珍しくないが、相互会社から株式会社になったのは私たちが初めて。法的に未整備で、上場のルールも変えてもらわねばならなかった。金融庁や東証と議論を重ねて、何とか実現にこぎつけた。

――国内市場の将来性はどうか。

【喜田】人口減少、低金利の継続という“不都合な真実”はあるが、海外の生保を買収する戦略より、国内を基盤に成長を目指す戦略でやっていく。我々のコアとなるマーケットは、今後も十分に伸びる可能性を秘めている。実際、大同生命の主なお客様である中小企業では社長の高齢化が進んでいるが、病気などによる一時離職のリスクに備える商品をリリースしたところ、ヒットした。太陽生命も、主婦層を中心にアプローチしつつ、ご主人やお子さんたちに必要な商品を提案して成功している。新しいマーケットがまだつくれる証拠。